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蜂蜜エッセイ応募作品

蜂蜜はばあちゃんの薬

かおる

 

 子どもの頃、風邪をひいて熱が出ると、いつも治りがけに唇にヘルペスができた。祖母はそれを『熱の吹き出し』と呼んでいて、「お前もわしと同じやな」といいながら、唇に蜂蜜を塗ってくれた。舐めたらいけないと思いながらも、ついつい舌で少しずつ舐めてしまい、塗り直してもらうこともよくあった。それが楽しみで、風邪をひいて喉が痛い時にも、熱が出てしんどい時にも、「もう少ししたら熱が下がってきて蜂蜜を塗ってもらえる」と少しワクワクする気持ちで耐えることができた。
 ある時、いつもよりも激しく熱の吹き出しが出て、なかなか治っていかないので、父が私をお医者さんに連れていった。高齢の男性医師は私の唇を見ると、「そのテカテカしたのは何をぬったの?」と問いかけた。高いところから大人に見おろされ、否定的なニュアンスの響きで問いかけられたのが怖くて、私は小さな声で「……はちみつ……」と答えた。その瞬間、医師はふんっ、と鼻で笑い、小馬鹿にしたように「蜂蜜なんか塗ったんか。もう今度からそんなん塗らんといてよ。」と言った。父は、「すいません、おばあさんのしたことですので」と言い、私は、大好きな祖母が馬鹿にされたことが悲しく、このお医者さんの薬では治りたくない、と思ったけれど、数日したら治ってしまった。それからは祖母が私に蜂蜜を塗ってくれることはなくなった。
 私は大人になり、祖母も98歳で亡くなった。ある日本屋さんで蜂蜜をテーマにした本を見つけた。そこには、蜂蜜には殺菌作用があること、風邪や皮膚病の治療に使う地域もあることなどが記載されていた。(ばあちゃんは間違ってなかった!)あの世にいる今の祖母と、昔「蜂蜜では治らん」と言われてしょんぼりしていた時の祖母の、両方に届くことを願って、その本を仏壇に供えた。

 

(完)

 

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