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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

出世蜂の子

宮城 沙大みやしろ さき

 

 浜辺を散歩しているうちにいつのまにか空には星が見えていた。
 館山駅に着くと、一軒の魚料理屋が目に入った。夕飯にはちょうど良い時間だ。
 店に入り私はカウンター席に座った。生ビールが非常に美味しい。店の女将さんは「今日は暑いからね」と言ったが、本当に『美味しいビール』だったのだと思う。
 暖簾をくぐったとき私は一番客だったが、そのあと常連客が次 々と店に入ってきた。
 私が一人だったからなのかもしれないが、座敷に座った常連のお客さんが声をかけてくれた。私はカウンターの椅子を桟敷の方へ向けて言葉を交わす。すると常連のお客さんが「食べてみて」と、拾いたての「山栗」をひと握りくれた。小粒だけど甘くておいしい。今年初めて食べることを伝えると「それはよかったね」と喜んでくれた。
 二杯目のビールを飲み終えると、少し酔いが回ってきた。そろそろ店を出ようかと思っていたとき、先ほどの常連のお客さんから今度は「蜂の子」を勧められた。
 「食べられる?」そう聞かれて、私は「はい」と短く答え、その「蜂の子」をパクンと口に入れた。すると「すご―い!」と周りから拍手が起きた。
 私は満面の笑みを見せ英雄気取りで暖簾の外に出たが、あれはきっと素面では食べられなかっただろう。酔った勢いというものだ。
 それから二年後、私はまた一人で館山を訪れた。
 夕飯は二年前に訪れたときと同じ店に入った。
 御主人と女将さんに、前回来た時には常連のお客さんから「蜂の子」をごちそうになったことを話すと、どのお客さんのことかすぐにわかったようだった。そしてそのお客さんは実は蜂が大好きで、今は養蜂場の社長になったのだと教えてくれた。
 社長!
 すると二年前に食べさせてもらった蜂の子はもしかしたら出世蜂だったのかもしれない。あの日、私は縁起物を食べさせてもらえたのであり、それが偶然の出来事だったと思うと、振り返る旅の思い出にほんのり色づけがされたような気持ちになった。

 

(完)

 

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