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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

蜂に教えてもらったんだ

日下 はるか

 

 ミツバチのする仕事が面白いなと子供のころ思っていた。
 
 凄く働き者のイメージがあって、あっちこっちを飛び回って蜜を集めて。
 
 幼いころ、蜂に刺されたことがあった。
 その時は痛かったし、泣いたけれども、わたしが興味を持って蜂の巣を木で突いたからだ。
 
 右手首にグルリと黄色の花の腕輪みたいに沢山の蜂がとまっていたのが今での鮮明に写真のように覚えている。
 
 「仕事の邪魔をしちゃったんだな」と、すぐにわかった。
 
 大事な巣を守ろうと必死さが伝わって、蜂に刺されたことをすぐに言えなかった。
 
 どんどん腫れていく腕におばあちゃんが気が付いて、病院に行ったけど、お薬を塗ってくれた先生が
 「沢山集めた蜜を取られちゃうと思ったのかもね」と、そう言ってくれた。
 
 まん丸くて、黄色と茶色のおしりが可愛くて、なのに怖い音がブンブンなって、わたしに近づいてきたんだ……そう先生に話したら、「ふふふ」と笑って、「蜂蜜を美味しく食べたらいいじゃない」と頭を撫でてくれた。
 
 大人になった今でも、右手首には、刺された痕があって、蜂蜜をみるとキュンとする。
 
 好きな人を想う感覚と、なんか似ている。
 
 自分も働き蜂になって、美味しい蜂蜜を忙しく作るような、そんな日 々で、ふと忙しい朝に、蜂蜜が食卓に並ぶと、右腕の痕を見てしまう。
 
 あのとき、すぐに刺されたことを言えなかったわたしは、わたしが悪いことをしたと思ったから。
 
 一生懸命なにかやってる人に、「あのね、あのね」と邪魔してごめんねの気持ち。
 
 咳の止まらない大人になってしまって、会社の人が「蜂蜜」の飴をくれた。
 
 「言いたい事」我慢する大人になってしまったけど、たまに、その飴を舐めて思うのは、「伝えたい事は、悪いことじゃない」。
 
 時 々、痛い思いをするけど、甘い味で癒してくれる、そんな世界がその先にあること。
 
 痛かったら「痛いよ」って言っていいこと。
 「我慢しなくていいんだよ」って、何も悪いことなんかないんだよって。
 
 この腕の痕はずっと残っていたらいいな。
 
 きっとあの日の出来事は、今の大人の自分に繋がっているんだもん。

 

(完)

 

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