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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

蜂蜜色の女の子

さき

 

 小学生3年生の頃、突然イギリスから女の子がやってきた。父親の仕事でしばらく日本で暮らすことになったと先生が説明していたとき、私は彼女の蜂蜜色の長くてまっすぐな髪を見つめていた。彼女は窓側の席に座った。彼女は日本語がほとんどわからないようで、英語を習っている子がいつも彼女と一緒に行動していた。英語なんてさっぱりだった私は外の景色を見るふりをしながら太陽の光に当たって黄金色に輝く髪をずっと見つめていた。
 いよいよ彼女がイギリスに帰る頃になって、私は自分の気持ちを伝えたくなった。「蜂蜜色のきれいな髪だね」をお母さんに英語にしてもらい、プーさんのメモ帳に書き写した。なんだか恥ずかしくて結局最後の登校日だった金曜日に、教室で彼女が一人で座っているところを狙って机の上にさっと小さく折ったメモ帳を渡した。彼女の反応を見るのがこわくて、ぎこちなく笑ってすぐに立ち去ったのを覚えている。
 月曜日の朝、教室に行くと机の上に何かが置いてあった。小さな瓶に入った蜂蜜だった。手紙も添えられていて、「ありがとう」の文字と、黄色い髪の女の子と黒い髪の女の子が並んで笑っている絵が書いてあった。
 私は通常男性を好きになるが、思えばあの時の私は彼女に恋をしていたのかもしれない。私にとって蜂蜜は、絶対に濁ることのない、透き通った恋の色だ。

 

(完)

 

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