光倫
「この絵本読んで」
自分で選んだ本を寝床に持ってくる。毎晩、絵本の読み聞かせをしていると、兄妹ともにお気に入りの繰り返し読むものが出来る。
息子は「ぐりとぐら」娘は「しろくまちゃんのホットケーキ」だった。
奇しくも、二冊には共通点があった。どちらのお話にも、それはそれは美味しそうなパンケーキが出てくるのだ。
私は調理師でお菓子作りが得意。本当は色 々なケーキを焼きたいのに、子供達は絵本の影響で、ふかふかの大きなパンケーキに溢れるほど蜂蜜を垂らして食べるのがなによりのご馳走らしく、よくおねだりされて焼いた。
ケーキのように切り分けて、かぶりつく。
蜂蜜を口の周りにたくさんつけながら食べる可愛い姿を見て、
「このまま時が止まれば良いのに」
なんて思っていたが、あれから20年程時が過ぎた。
今では息子も、娘も社会人になり、一人暮らしをしている。
可愛かった面影は、もはや親である私にしか分からないだろう。
でも、二人とも今でも休みの日には、パンケーキを焼き、蜂蜜をたっぷりとかけて食べているらしい。
食の好みは、幸せな思い出により作られていると信じてる。
あの可愛い姿を見られたのは親の特権だし、したたる蜂蜜のパンケーキの美味しさが、お母さんとの思い出の味になっているとしたら、親冥利に尽きる。
(完)
蜂蜜エッセイ一覧 =>
蜂蜜エッセイ
応募要項 =>
Copyright (C) 2011-2025 Suzuki Bee Keeping All Rights Reserved.