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蜂蜜エッセイ応募作品

ありがとう

三郎

 

 体調の芳しくない妻をコロナから守るために除夜の鐘も初詣も避けた今年。
 「ジイジとバアバにお土産」と、孫が紙袋を差し出す。
 「ありがとね」と小学五年の頭をなでてから、袋の中身に妻の唇がブルブル震えた。
 
 「去年は散 々だった。今年は神様を変えてみよう。丑年だから――」と、善光寺へ初詣(密を避けて三が日を過ぎてから)に出かけた息子ファミリー。
 土産袋の中に入っていたのは『お達者守』と健康祈願の祈祷木札と思いがけないものだった。
 「これは?」と問う妻に孫が照れくさそうに答える。
 「蜂蜜って、とても体にいいと聞いたから」
 お参りの帰途、わざわざ遠回りして蜂蜜の専門店に立ち寄ったのだという。
 
 「バアバに早く元気になってもらいたくて。竹のようにやせた体を見るのがつらいの」と上目づかいに妻を見る孫。
 「普通の健康長寿のお守より『お達者守』のが嬉しい。このお札、デカいから高かったでしょ」と孫に潤んだ眼差しを向ける妻。
 
 反抗期なのか、幼児期の可愛さが消滅して寂しさを感じていたのだが、孫はいつの間にか優しい少女に脱皮していた。
 板のような胸が愛おしそうに抱く『自然の美味しさを主張する』とラベルが貼られた蜂蜜の瓶は、妻の病気にはお札よりもお守よりもご利益がありそうな気がした。

 

(完)

 

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