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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

息子の独立

矢ケ崎 直実

 

 我が家では365日はちみつは欠かせない。
 こんがり香ばしく焼けた食パンにとろ~りとかける。
 目覚まし時計の電子音にたたき起こされた体を、はちみつがもう一度、今度は優しく起こしてくれる。
 窓から差し込む朝日がはちみつを金色に染めるがゆっくり鑑賞している暇はない。
 
 平日とはうらはらに日曜の朝は優雅である。
 丸いホットプレートでまあるいホットケーキを焼く。そこに四角く切ったバターをのせる。その上からこれでどうだと言わんばかりにとろんとろんとはちみつをたっぷりかける。
 もう私の人生にこれ以上何もいらないと思わせてくれる朝だ。
 
 冬の朝にははちみつしょうが湯。
 しょうがをすりおろしてはちみつをかける。そこへなみなみと熱い湯を注ぐ。忙しい朝にレモン汁など搾ってはいられない。シンプルにしょうがとはちみつ。
 ふうふう息をかけて「熱っ」と言いながら飲む。盆地の冷えは厳しい。これを飲まないと外へ出る気には到底なれない。
 
 おかずを作るときにもはちみつの助けを借りる。
 薄く塗って安い肉をランクアップ。うちはいつもいいお肉を買っているのよと家族には言っているが、実はそうではない。
 また、ごはんのお供にははちみつとしょう油の甘辛コラボに勝るものはない。料理上手ではなくても星3つである。
 
 美容と健康にもいいと聞く。美容への効果のほどはわからない。アラフィフになると劣化もそれなりだ。
 しかし私も家族も大病をせずにこれたのには、はちみつも一役買っているのかもしれない。
 
 昨春息子が社会人になり他県で一人暮らしを始めた。
 コロナ禍にあり引越しの手伝いにも行けなかった。どんな暮らしをして何を食べているのやら。
 体にだけは気をつけてと、ただそれだけが願い。
 秋、万全の感染対策をして息子の住む街を訪れた。
 単身者用マンションの狭いキッチンに、1kg入りの大きなはちみつのボトルがでんと座っていた。
 大丈夫だ。
 息子と夫に気づかれないように涙をぬぐった。

 

(完)

 

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