香辛料
父が亡くなって、間もなく10年。日本の四季や自然を愛した父は、私が幼い頃から良く里山歩きに連れて行ってくれた。見過ごしてしまうような草花や木や山菜を見つけては、それを私に教えてくれた。今でも自然の中に身を置くとほっとする感覚は、父のおかげかもしれない。
そんな父がしてくれた最後の贈り物が蜂蜜であった。近所に専門店が出来、蜂蜜は身体に良いからと大きな瓶入りのものをプレゼントしてくれた。大人になってからは、父から直接物をプレゼントされる機会は滅多になかったので、とても嬉しかったと記憶している。それまで蜂蜜は高級品というイメージが先行し、ホットケーキなどのお菓子やヨーグルトなどに少量を使用するくらいだった。けれどもその時は大瓶をプレゼントしてもらったので、煮物などの和食のおかずにも惜しみなく使用することができた。蜂蜜を使った料理のレパートリーも増え、同時に味も格段に良くなっていった。今度はそのことが嬉しくて、お返しに蜂蜜を使ったおかずを実家に届けた。それがまた父に喜んでもらえるという、蜂蜜からいろいろな相乗効果が生まれたような気がする。
自然を身近に感じながらの父の一生は、心豊かなものだったのではないかと、今改めて思う。そして、自然の恵みそのものである蜂蜜と父との記憶は、これからも私の心にしっかりと居続けるだろう。蜂蜜の自然な甘みと深い味わいを失うことがないよう、今後も蜂が安定して生育出来る環境を守るために私も応援していきたいと思う。
(完)
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