宇野 雅
薄くスライスしたレモンにたっぷりの蜂蜜を入れ、清潔なビンで冷蔵庫に保存する。それからは我慢。一晩から二 ・三晩寝かせると完成です。毎朝の楽しみは蜂蜜レモンの数切れをカップに入れ、温かい紅茶を注いでスプーンで静かに混ぜ、レモンの香りと一緒にすすり飲みます。夏季は季は炭酸水で割るとスッキリとして最高。甘美!文字通りの心地よい甘さ。混ざり物の無い純粋なまろやかさ、こうして蜂蜜を長い間楽しんできましたが、ある日、ふと思いました。
蜂蜜は蜂が生きるために懸命に働いて貯めたもの。それを人間に横取されては蜂は生きていけなくなる。でも蜂は元気に飛び回っているし、蜂蜜も毎年販売されています。どうして?
気がつくのがちょっと遅すぎたけれど、ネットで調べてみました。養蜂者の方 々は秋に採蜜する時、蜜蜂が越冬に必要な蜜は残して、余分な分だけ採蜜する。蜜が不足している場合は採蜜はせずに、越冬に必要な蜜は必ず残してやるそうです。春になると蜂はまた元気に飛び回ってせっせと蜂蜜を貯めます。だから心配しなくていいそうです。ちょっと安心しましたが、なんだか蜂に申し訳ない気がします。
生きるということは他者の生命を生きること。それが自然の摂理とはいえ、この厳粛な事実を前に襟を正す思いです。殺生を嫌うベジタリアンとてこの事実から逃れることは出来ません。しかし、食する度にこんなことをいちいち気にしてはいられません。
私はいまは、蜂蜜レモンを味わうとき、瞼に花畑を飛び回る蜂の姿を思い浮かべ、心の中で有難うと小さく呟くようにしています。すると、これまで以上に美味しく感じられ、身体中に蜂蜜の滋味がしみこんでいくようです。正に、これぞ甘美!私の小さな幸せのひとときです。
現在、私たちは重苦しいコロナ禍の真っ只中にいます。時 々はこうして蜂蜜レモンで身も心もリラックスしてみては如何でしょうか。
(完)
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