のま
寝るちょっと前に、喉に良いからと、スプーン一杯のハチミツをなめることが習慣となっている。
喉からの風邪ひきなので、これはやばそうだと思うと、大根おろしにハチミツを混ぜて食べる。そして、なぜか、大根をおろしているときに思い出すことがある。
あれは、小学四年生のころだった。遠足の昼食時に、クラスメートが持ってきていた、薄くスライスされたレモンをハチミツで漬けたものを初めて食べた。かなり衝撃は大きかった。それまでハチミツというものを口にしたことがなかったからだ。
その味が忘れられなくて、母にハチミツを買ってくれと頼んだが、砂糖があるのだから、ハチミツはいらないと怒られた記憶がある。我が家では、ハチミツは高級品だったのだ。
そして、月日が流れ、高校一年生のときに、サッカー部の彼氏に、レモン漬けを差し入れしたことがあった。このときもハチミツは買えず、結局砂糖漬けだった。あとになって、彼のお母さんから「レモン漬けごちそうさま」って言われて、彼が手を付けていなかったことにショックを受けた。かなり甘かったらしい。初めてのレモン漬けは失敗に終わった。
こういう話を、スポーツクラブのインストラクターにしたら「ハチミツのレモン漬けはなつかしいですね」と言った。だから、小学生のころからずっと野球に携わっている二十代後半の彼に、高校時代に、女子マネージャーや彼女に差し入れされたかと、期待しながら聞いてみた。でも、答えは想像と違って、高校時代というより、小学生のときに、保護者からの差し入れが多かったという答えが返ってきた。
レモン漬けは、部活動の青春の象徴かと思っていたから、ちょっと拍子抜けしたが、わたしも、昔と違ってハチミツは躊躇せずに買えるのだから、砂糖ではなくレモンのハチミツ漬けをつくってみようと思った。
(完)
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