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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

ミツバチが運ぶ記憶

林 佳音

 

 ミツバチを見ると、祖父母を思い出す。
 
 祖父母は、本当に小さい規模ではあるけれど、養蜂のようなものをやっていた。家の一角に置かれた養蜂箱。その周辺を気ままに飛ぶミツバチたち。その横を平然と行き来する祖父母。私にはどれも新鮮な光景だった。私にとっては馴染みが無さすぎるその光景に、驚きと怖さと好奇心が混ざったような、そんな不思議な気持ちが湧いたことは今でも忘れられない。
 
 虫嫌いだった私は養蜂箱に近づこうとはしなかったし、特に祖父母に向けて養蜂について聞こうともしなかった。祖父母に対して話題として触れなかったのは、興味がなかったからというわけではない。養蜂をしている祖父母が、養蜂を始める前より確実にいきいきしているのが目に見えて分かったからこそ、触れるまでもなかった……という感じである。楽しそうというか、嬉しそうというか、幸せそうというか。とにかく充実した生活をしている祖父母の姿を見ているだけで、私は何だか嬉しい気持ちになって、特に触れなくても満足してしまうのだった。
 
 私は祖父母と離れた地域で暮らしていることもあり、今も祖父母が養蜂をしているのかは分からない。もしかしたらもう辞めているのかもしれない。けれど、ミツバチを見る度にいきいきしていた祖父母の姿を思い出す。そして、その度に過去と同じように何だか嬉しい気持ちになるのである。
 
 ミツバチは、私に祖父母についての記憶を運んでくる。心地良くて、どこか安心感があって、懐かしい記憶を運んでくる。そして同時に、祖父母に会いたくなる感情も運んでくる。……今のこんな状況が落ち着いたら、いつか顔を見せに行こう。

 

(完)

 

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