Kasho.
師走が去り、正月料理が飽きた頃だ。
ふとマヌカが食べたくなり、キッチンに立つ。
思えばこの香りを、深く味わい食べるようになって、
わたしは笑う事が多くなった。
マヌカの香りは、初めて口にした時は強くて、衝撃的だった。
これが花の蜜だとは思えなくて、
どちらかというと強い漢方薬みたいだって思った。
精神的に参る事が多い中マヌカの存在は、
わたしにはおくすりみたいで、
宝物で、
気分を上げたい時には必需品になっていた。
十五年、まろやかに生活にとけこんだそれは、
蜂蜜でなく、庭木として五年前にやってきた。
とげとげの、ピンクの、上品な御柳梅。
マヌカ、ともいうのね。
家を建ててすぐの、まだ土さえ出来ていない庭の片隅を夫が掘ってくれた。
西側をわたしがさみしくないように、華やかに彩るために。
引越してきてから、いろんな事があった。
飛び出して泣いて出ていくって言ってみたり、
子供と大喧嘩したり、
金魚が死んだって、やっぱり泣いたりもした。
御柳梅のそばに、亡骸を埋めたりもした。
何年か経って、夫が花言葉を話しだした。
「お前の誕生日の花、な」
知らなかった。自分の誕生日の花が、
マヌカだなんて!
嬉しくて、泣いた。いっぱいないた。
あれから時が経ち、もうすぐ、誕生日がやってくる。
貴方が忘れないでくれるなら、わたしもずっと香っていたい。
痛いくらいの、西側の、御柳梅と共に。
夫婦の木を、ありがとう。
今日もキッチンで、マヌカを人差し指につけては、
にっこり笑って、貴方の帰りを待ってるから。
(完)
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