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蜂蜜エッセイ応募作品

魅惑のコムハニー

のぶのぶ

 

 夫は蜂蜜が大好きだ。よく、くまのプーさんが蜂蜜を食べるモノマネをしながら「やっぱり蜂蜜はうまいねぇ」と言っている。そんな彼が特に気に入っているのがコムハニー。ザ ・蜂蜜な見た目なので、眺めているだけでもワクワクするらしい。
 こんなに大好きなコムハニーにもかかわらず、なかなか夫は買ってこない。「やっぱり蜂蜜はおいしそうだなぁ」と言いながら、お店で穴が開くくらい眺めている。私が買ったら?と勧めても「いやいやいやいや、贅沢だ」とゴニョゴニョ言いながら眺めて、やはり買わない。こんなやり取りを何度か繰り返し、忘れたころにようやくコムハニーが我が家にやって来るのだ。
 そしてすぐに食べるのかと思いきや、開封するのがもったいないらしくコムハニーは戸棚の中にしまわれる。夫は毎日戸棚を開けてはコムハニーを眺め、「やっぱり蜂蜜はいいねぇ」と言うと、また戻す。今日こそ食べるのかなと思いながら毎日夫を見ているが、やっぱり食べない。
 いつになったら蜂蜜が食べられるのだろう?そんなことを続けていると私の方が我慢できなくなってくる。「蜂蜜開けちゃったよ」という私の一言で、ようやく彼も鑑賞用から食用に切り替える。
 しかし、ここでまた彼の葛藤が始まる。大好きなコムハニーを食べたい。でも食べたらコムハニーがなくなってしまう!そんなわけで夫はチビチビと少しずつ食べる。「楽しみは長く続く方がいいからねぇ」と言いながら。一方私は、少しの蜂蜜を長い期間食べるよりも、たっぷりの蜂蜜を短い期間食べる方が嬉しいタイプ。大好物を節約しながら食べている夫の傍らで、見せびらかしながらたっぷり食べる。可哀そうに彼は大好物の蜂蜜をほとんど妻に奪われてしまうのだ。それでも「ごめんね、蜂蜜全部食べちゃった」と私が謝るたびに「食べるために買ったからいいよ」と彼は笑っている。
 今度記念日にたくさんのコムハニーをプレゼントしようかな。きっとほとんどが私のお腹の中に入るのだろうけれど。

 

(完)

https://nobu-nobu-voyage.com/

 

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