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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

じいじの蜂蜜

夢の酒

 

 「待ってろ、忙しいんだよな、今取り上げてくるから」30分しないで 「オギャア、オンギャア」
 「大変だ、えーと、ちんちんがついてない」先生のジョークで、「女の子がいいな」という私達の希望を知ってのことだ。
 医院の裏庭と言うより裏山という方が似合っている、色とりどりの花が咲き乱れる広大な敷地がある。孔雀のつがいがゲージの中にいる、その大きなゲージの隣りに、より大きな小屋があり、鳥の種類ごとに分けられたかごが、少なくとも30個は下らない。そこで弱った鳥を保護している。野鳥の飼育は昭和のその頃まだ許されていた。しかしそろそろ問題視され始めて、役所から指導が入る、が、「今、放したらみな死んでしまう」と、あくまで保護目的で飼育しているのであった。実際に元気になった鳥は、野に戻されていた。でかい図体の先生が奥方と二人して目頭を押さえながら、鳥かごの蓋を開けているのを、何度か目にした。
 多趣味の先生で 蜂蜜をとっている。裏山の至るところに巣箱がある。「持っていくか」 「は、はい」と私。
  「先生、患者さんが」「ああ、今行く」と返事をしたものの行く気配はなし、医院の待合室には診察待ちの患者が大勢いるのに、
 「先生、行った方がいいですよ」
 「そこの瓶、大きい方取ってくれ」 そのまま素手で箱から蜂の付いた板を無造作に引き出すと、分離器の方に提げて行く、当然のように辺りは蜂の羽音がいっぱいで日頃耳にしない異様な音の世界だ。
 「もう一瓶取ってくれ」取れたての蜂蜜を二瓶いただき、その美味しさに感動する、が、蜂が蜜の中に入っているのには閉口した。
 そして私も還暦過ぎた今、先生の墓前で「蜂蜜を取ってみたい」と、思った、年寄りの楽しみにしてはあまり聞かないが、この春、産まれた孫娘に、「じいじの蜂蜜おいしい」なんて言ってもらったらうれしい。

 

(完)

 

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