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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

ミツバチと蜂蜜

間瀬輝

 

 ミツバチが好きだ。
 「蜂蜜? 」
 「いや、ミツバチ」
 蜂蜜もとても好きだけど、まずミツバチが好きだ。そう言うと、たいていの人に「えぇー」という反応をされる。幼いとき、公園で飛んでいるミツバチを見ると父は靴を片方脱ぎ、一発で地面に落として解体して見せた。針を抜くとそれに付随した器官が一緒に抜ける。針は本体から抜き取られた後も、ぴくぴくと、見えない敵を打ち倒そうとするかのように暴れる。蜜袋が一緒に取れ、それを食べるとちゃんと甘い。でも蜂蜜の味ではない。不思議だ。いつでもスーパーで手に入るはずなのに、その実全くわかっていない。蜂蜜は不思議だ。そしてミツバチは不思議だ。ここまで話すと、残念ながらたいていの相手をますます気味悪がせる結果となる。別に蜂蜜おいしい、それでいいじゃん、と。
 しかし、スーパーの野菜を見てそれが実際育つのを想像できるか、という言葉を聞いたことがある。蜂蜜も同じだ。スーパーで並んでいる蜂蜜を見て、それを作っている小さな昆虫を想像できるか。さらにその巣から蜂蜜をどうやって集め、それをどう瓶につめ、どのように運ばれてくるか、想像できるか。
 なにも人にミツバチを好きになれと強要はしない。でも、わかったつもりになって生きているのはつまらないんじゃないか? 蜂蜜おいしいの奥にはあなたの知らない摩訶不思議な世界があるんですよ。ミツバチが少し近くに寄っただけで、悲鳴をあげて逃げる人を見ると、残念だなぁと思う。急に動くとかこちらが襲うようなことをしない限り、ミツバチから刺されることはほとんどない。
 私は今でもミツバチが飛んでいると、その素早い動作や、驚くほど精緻な体を見つめてしまう。しかしそんな私も普段蜂蜜を食べるときは、蜂蜜おいしいおいしいくらいしか考えてない。それでもまれに、このバター付きパンの上で輝いている蜂蜜が、花の蜜からどのようにここまでたどり着いたのか考える。その行程はきっと簡単には説明できないほど複雑で不思議なのだ。

 

(完)

 

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