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蜂蜜エッセイ応募作品

ほろ苦く甘い。

コウテイペンギン

 

 一体、いつからかわからないが気付いた時から蜂蜜が苦手であった。実家でたまに見かけたような気がするが、誰が食べていたのかわからないがいつの間にか消費されていた。
 甘ったるいとしか形容する言葉が見つからない蜂蜜を自ら口にすることはなかったが、学生時代の喫茶店でのアルバイトを経て少し違う存在になった。20歳の頃、通学途中の駅にある喫茶店でアルバイトをすることにした。非常にお洒落な土地とは裏腹に素朴で落ち着いた雰囲気とリーズナブルは価格設定の店で、客層は学生から年配の方まで幅広い。また、割安で店のメニューを賄いで食べることができるのも楽しみの1つで、その中でもマーマレードと蜂蜜に浸したハニートーストと蜂蜜を添えて提供されるロイヤルミルクティーがお気に入りだった。苦手であったはずの蜂蜜がこんなに美味しいものだったのかと見直すきっかけになった。アルバイト仲間にも恵まれ、そこでのアルバイトは大学を卒業するまで続けることになる。しかも、その仲間の1人に私は淡い恋心を抱いていた、付き合っていた人は別にいたのに。その人は調理の仕事を担っていた。店が暇な時間など楽しくおしゃべりをしながら、その人の軽食や飲みものを作る手元を見るのが好きだった。調理に定評のあるその人の作る私の好物たちは見た目も味も抜群に良いと聞いたことがあった。ある日、ハニートーストとロイヤルミルクティーがメニューの中で好きだと話題にしたことがある。しかしその人は1番調理するのが面倒な2つだと返答した。私は内心ショックを受けた。何となく自分と距離を置かれた気がしたのだ。いや、そうしなくてはいけなかったのは自分だったことを気付かされた。付き合っている人にアルバイトに燃えていることを少し不思議に思われ始めていたし…。
 言うまでもなくその恋はほろ苦く、想いを伝えたかどうかさえ記憶はあやふやな形で終焉を迎えた。しかし蜂蜜のメニューのおかげで20歳の健気な気持ちを思い出し微笑むことができるのである。

 

(完)

 

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