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蜂蜜エッセイ応募作品

幼き日の蜂蜜屋さんの思い出

谷藤英明

 

 函館にたった一軒の蜂蜜屋さん。私がまだ小学校に入学する前、母に手を引かれ、いつも蜂蜜を買いに行った。
 電車道路を歩き、蜂蜜屋さんに着くまでは三十分以上かかった。今から五十年以上も前だが、交通手段は路面電車、できるだけ電車賃を浮かせるため、可能な限り歩いた。
 蜂蜜屋さんでは何種類もの蜂蜜が売られていた。大小の瓶で売られていて、大きい瓶は一升瓶であった。私は一升瓶の蜂蜜が美味しそうに感じていた。得だったので、一升瓶の蜂蜜を買うことが多かった。重かったので帰りは電車に乗って帰った。
 蜂蜜はどれも上が透明で、底に白い結晶が溜まっていた。見るからに美味しそうだった。クローバー、アカシア、レンゲ等の蜂蜜があり、その都度違う種類を食べていた。
 小さいながらに私はそれぞれの味の違いを覚えた。食パンにつけて食べるのだが、どうしても蜂蜜が垂れてしまい、口の周りや手を汚していた。甘く舌にまつわりつく贅沢な甘さは、幼少期に覚えるべき味覚であろう。
 そしてめったに買わないレンゲの蜂蜜が一番美味しいことに気付いた。それぞれ個性があり美味しいが、レンゲだけは別格だった。何より独特のクセがなく、飽きの来ない上品な味だった。この味を知ってから、いつも母にレンゲの蜂蜜をねだるようになった。
 母は私が十八歳の時、病気となりその後亡くなった。蜂蜜を買いに行ったことは、母と過ごした十八年間の思い出の一つである。
 私は結婚し、しばらくしてから久 々に純国産の蜂蜜に巡り合うことができた。何十年振りのあの蜂蜜屋さん、今も営業している。妻もこのお店の蜂蜜を食べていたので、再び食べることができた。高価になった蜂蜜だが、今食べるとあの幼少期を思い出し、幼き日の原風景が浮かんでくる。現在、更に美味しく
味わえることは誠に喜ばしい。

 

(完)

 

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