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蜂蜜エッセイ応募作品

おばあちゃんと蜂蜜

ココア

 

 おばあちゃんはいつもそこにいた。
 
 ガラスケースの前の椅子の上。うちは蜂蜜屋だった。
 
 私はおばあちゃんの膝の上が大好きだった。
 
 たらんと垂れ下がっているけど、とってもすべすべな腕の皮を触るのが大好きで。
 
 「もう、重たいから抱かなくていいよ。」と母が言っても、おばあちゃんは私を離そうとしなかった。
 
 私たちはいつもお店番をしていて、いろんなお客様がいらっしゃるのを出迎えた。
 
 おばあちゃんはとっても可愛くて、笑顔の絶えない人だった。
 
 おばあちゃんが90才くらいの頃、お客様から80才くらいだと思ったと若く見られたことが嬉しかったみたいで、とっても嬉しそうだった。
 
 時 々両親が、お店に出す用の蜂蜜を瓶詰していた。
 
 大きな缶から、とろっと透き通ったきれいな蜂蜜が瓶に詰められてラベリングされていく。私は幼かったけど、蜂蜜の種類による香りの違いや色の違いなど見分けられるくらい本当に蜂蜜が私の生活に浸透していた。
 
 パンにつけて、お茶に入れて、お料理に入れて、そのままなめたりもして。
 
 今はもうおばあちゃんも亡くなって、お店も無くなってしまったけど、今でも生活には毎日蜂蜜がある。
 
 この甘い香りと味は、いつまでも私とおばあちゃんの思い出の味だ。

 

(完)

 

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