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蜂蜜エッセイ応募作品

雁月には蜂蜜を

多田 愛弓

 

 雁月を初めて食べたのがいつだったのか、覚えていない。だが、気がついた時にはすでに懐かしい食べ物になっていた。東北に産まれ、暮らし続けているわたしだが、いつ食べても懐かしいふるさとのような味わいがする。それは、わたしが生まれる以前から、父母、祖父母、その前に生きた人たちの中に、ずーっと息づいてきた食べ物だったからだろう。雁月はお祝い事などの人の寄り集まりにはいつも登場する。胡麻をいっぱい散りばめた、ふっくらとした茶色の蒸しパンのようなものだ。小麦粉に砂糖と卵を混ぜたものに、重曹に酢を入れ、泡が消えないうちに急いで混ぜこむ。そこまではよくある蒸しパンの作り方だが、最後に必ず蜂蜜を加える。蒸しパンと雁月の違いがこれで、実にしっとりしたきめ細かなやさしい食感が生まれる。蒸し上がり、湯気の立つ雁月を頬張ると、ふんわりして、さらにしっとりと、寄り添うようなやさしい食感に頬がゆるみ、胸とおなかが満たされる。なんとも懐かしく、いつ食べても心が穏やかになる。だが、雁月に蜂蜜を入れるのを、最初に考えたのは誰だろう。わたしの母方の実家では、昔、小麦粉も胡麻も自家製だった。そして養蜂もしていたという。自家製の粉と自家製の蜂蜜で作る雁月は、実家のみならずその土地ならではのものになり、時代が移った今では、広くふるさとの味として受け継がれている。わが家では、三人の子どもたちが大好きで、小さい頃は大きな蒸し器いっぱいに作っていた。昔からある食べ物なのに、チョコレートやスナック菓子より手を伸ばしたものだ。いまではすっかり大人になったが、これから母として父として、今度は自分たちの子どもたちに伝えてほしいなと思う。小麦粉、胡麻という地の恵み。それをつなぐ蜂蜜、それらに自分たちが育まれてきたことを思い出してほしいのだ。

 

(完)

 

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