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蜂蜜エッセイ応募作品

生姜焼き

江藤理子

 

 生姜焼きを作ろうとしたが、砂糖が見当たらなかった。
 砂糖の代わりに甘いものを探した。
 定年退職した部長から頂戴した蜂蜜の存在を思い出した。
 他の部長達からは商品券を頂いたが、なぜかこの部長からは蜂蜜だった。
 今にして思えば、部長には砂糖がなくて困る私の予知夢を見たのだと思う。
 そうでなければ、慣例的に商品券のところを蜂蜜にはしない。
 蜂蜜部長のおかげで無事に生姜焼きが完成した。
 砂糖よりほんのり甘くて、コクのある生姜焼きだった。蜂蜜をフライパンに垂らす時、とてもキラキラしていたのも生姜焼きがいつもよりおいしく感じた理由の一つだと思う。
 もしかしたら部長は、ちょっぴりレベルアップした生姜焼きに、私が感動している夢も見たのかもしれない。
 そう思うと、なんだか蜂蜜部長の退職が少し寂しくなったが、再雇用で少し遠慮がちにもぞもぞ働いていることをすぐに思い出した。
 ぽっちゃり気味の部長がもぞもぞ働く様はみつばちに似ているなと思った。

 

(完)

 

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