石川 友梨
我が家は冬になると活躍する『かりんの蜂蜜漬け紅茶』なるものがある。
私が高校生の頃、喉が痛いと言った私に母が入れてくれた紅茶。
初めて紅茶に何かが沈んでるのを見た私。
おっかなびっくりな感じで飲んだ私。
高校生にもなって、知らない食べ物飲み物は基本食わず嫌いで手をつけない私。
それでも、ちょっとだけ口に含んだ。
馴染みのある紅茶の味が甘くて驚いた。その甘さの中に苦味がある。しかも、口全体がその味の膜に覆われる感じもする。
なんだか、不思議な飲み物だった。
今まで『かりん』というものを知らなかった。てっきり、果物だから柑橘系のさっぱりした味なのかなと思っていたので、苦くて驚いた。
だからこそ、甘い『蜂蜜』と相性が良いのだろう。
それを飲むようになってからか、喉の調子がよくなった気がした。
冬になるとだいたい朝は喉が痛くなるので、その甘くて苦い不思議な紅茶を飲む。すると、一日を調子良く始められる気がしたのである。
試しに買った『かりんの蜂蜜漬け』を飲み続け、「喉の調子が良くなった!」と母はすごく絶賛。毎年冬が来る度に一瓶買うようになった。
もちろん、私もお気に入りである。
しかし、数年前から『かりんの蜂蜜漬け』という商品が見当たらなくなった。
「何で売らなくなっちゃったんだろう」と母は残りわずか、瓶の底で冷たさに固まった蜂蜜の塊をつついていた。
そのうち母は、かりんが売られる時期になると、蜂蜜と共に買ってきて手作りするようになった。
最初のうちは、失敗して蜂蜜に白いカビらしきのが出来てしまい、苦労していた。
思考錯誤を重ね、完成された『お母さん特性かりんの蜂蜜漬け』は、お袋の味の一つとなっている。
冬になると、必ず母と交わす会話がある。「紅茶いる?」「うん」「かりん蜂蜜入れる?」「うん」
入れるか入れないかで、喉の調子が分かるのである。
(完)
蜂蜜エッセイ一覧 =>
蜂蜜エッセイ
応募要項 =>
Copyright (C) 2011-2025 Suzuki Bee Keeping All Rights Reserved.