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蜂蜜エッセイ応募作品

まごころの味

坂本 真司

 

 妻はママレード作りが趣味である。きっかけは、我が家の庭の八朔がおいしそうに実ったのを見て、ご近所の友人がママレード作りを教えて下さったことによる。今では、毎年季節になると、実るのを手ぐすね引いて待っているほどの腕になった。皮をむき、身は食べるために残し、包んでいたふくろはとろみの材料として使い、細かく薄切りにした皮といっしょに、一日中、石油ストーブの上でとろとろと煮込む。季節は冬だから、石油ストーブなら暖をとりながらの作業なのでありがたい。
 製品にラベルを貼るのは夫である私の仕事だ。産地名は、とうぜん「我が家の庭」である。そのほか、蜜柑の種類、材料、調理人名、配布先などを書くのだが、材料欄はグラニュー糖はもちろん、レモン果汁に加えて蜂蜜が欠かせない。つや出しには黄金糖まで入れて出来上がりにこだわる。極めつきは隠し味である。彼女は、この欄に臆面もなく「まごころ」と書く。配布先も「友人にかぎる」と記入して、もらった友人をよろこばせる。
 出来上がった製品は、蜂蜜が皮の苦みと絡まって、絶妙なバランスで甘みとほろ苦さを引き出して、味に深みを持たせる。
 ところで、私はどういうわけか、六角形状に並ぶ蜂の巣を見ると鳥肌が立つ妙な性状がある。見た瞬間、ぞっとして気分が悪くなるのだ。だからといって、蜂蜜が嫌いなわけではない。ただ、蜂の巣を見ると、もう駄目なのである。
 とまれ、蜂蜜入りの八朔ママレード、いちどご賞味あれ。「一度食べたら二度おいしい」とは、友人の評価である。この友人から、愛媛県で毎年行われるママレードの世界大会のことを紹介された。是非にもとのご推薦までいただいたが、恥ずかしいからと言って、妻はいまだに頑なに断っている。夫の私が言うのもおかしいが、出品したら賞を取るぐらいの味は充分にあると、手前味噌ながら思っている。

 

(完)

 

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