なおPooh
幼い頃の私は、食が細く身体の弱い子供だった。体力も無くよく風邪をひいた。そんな私のために母はいつも蜂蜜を常備してくれていた。喉の痛みには、大根を蜂蜜に漬けた大根シロップ。食欲不振の朝は、蜂蜜をたっぷり塗ったトースト。運動会、遠足のお供に蜂蜜レモン。おかげで気が付けば、随分と丈夫になっていた。ただ、不思議な事に母が蜂蜜を食する姿は一度も見た事がなかった。「母さんは蜂蜜が嫌いなんだ。」単純にそう思っていた。ある日、母が珍しく風邪をひいて寝込んだ。私は母がいつもしてくれていたように大根シロップを用意した。蜂蜜を補充すべくスーパーに行った私は蜂蜜の高価さに驚いた。母一人子一人の我が家は決して裕福では無い。私のために高価な蜂蜜を惜しげも無く存分に食べさせてくれていた母。自分は我慢して。涙が止まらなかった。月日が流れ社会人になり初月給を頂いた私は、一番に母の為に蜂蜜を買った。
(完)
蜂蜜エッセイ一覧 =>
蜂蜜エッセイ
応募要項 =>
Copyright (C) 2011-2025 Suzuki Bee Keeping All Rights Reserved.