さく
はちみつは、まるごと味わうことにしている。
うちではちみつというと、ちょっとした高級品。子どもが生まれてから、申し訳程度に健康を気にし始めて、はちみつは国産と決めている。そうすると、値段がどうしても高くなってしまうので、はちみつの出番は週一回のみ。それも決まってホットケーキのとき。本当は料理にも使ってみたいけど、ホットケーキにはつみつというのは、息子の譲れないこだわりなのだ。そんなこだわり派の彼も、はちみつをまるごと味わっている。
どんな感じで……かというと、こんなだ。
まず、ほかほかのまあるいホットケーキの隣に、小ビンに入った黄金色のはちみつをテーブルへ、コトリ。ほら、もう彼の目も私の目も、その輝きに釘付け。
ぱかりとあけて、上から覗く。甘い花の香り。ごくり。これ、おいしいって知ってるぞ、と体が反応。
そして、そっとひとさじすくう。スプーンに蜜が乗っかって、ぽてっ。そこから、真下へ逃げるように垂れていく細い蜜。きらきら。
少しもこぼさないぞという気合いでスプーンにからめとって、いざ。ホットケーキにたら~り。
湯気の立つ茶色の生地に、はちみつが広がってはしみこんでいく。バターももちろん投入。ああ、そこ、バターと混じり合っているところ、絶対おいしいやつ。うん、そこは最後に食べよう。じゅるり。
隣をふと見ると、息子もまばたきもせずにその様子を見ている。目がきらっきら。映ったはちみつもきらっきら。なんか、その姿さえもおいしい感じ。
そしてそして、ホットケーキを前に、姿勢をただして、ナイフとフォークを持ったら、いざ!!
スーッと切って、ほわっ。甘い蒸気がたちこめる。たらーり、生地から落ちそうな蜜。おっとっと、急いでぱくり。
……はぁ~っ、……これこれ~~~
隣で無言で食べてる息子。そうだ、君のおいしいは、無言だったね。顔は真剣すぎて、ちょっと怒ってるみたいな。ふふ、その姿もやっぱりおいしいなぁ。
いつの間にやら、お皿はからっぽ。今日もまるごと、ごちそうさまでした。
(完)
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