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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

ミツバチの一生

葛岡 昭男

 

 某分子生物学者曰く「植物と昆虫の共生関係は自然界の動的平衡が最も精妙な形で実現されたものだと言って良い」花は、私達人間の心を和ませるためにあるのではない。
 ミツバチを初めとする虫たちの心を捉えるため、進化が選び取ったものである。もし、私達が和むとすれば、それは均衡の精妙さのためであるべきだった。切ない働くばかりのミツバチの生き様に心が痛んだ。冬を越すロシア蜂の物語を読んだことがある、春に届いたミツバチは野原の北の端に置かれ巣箱は南側を向き、その背後には北からの風を防ぐ木立がある。熊にもやられず、近所の有機農場のズッキーニとカボチャの収穫量も増やしてくれる。
 世界中のミツバチについても同じことを言いたい。生き延びて欲しい。それはあまりにも哀れであり甘い蜂蜜を頂く人間にとって心が乱れてしまう。人 々に幸せを施すミツバチの習性かも知れない。
 多くの蜂にとって晩夏の救世主だったキリン草も去り、まだ残っている授粉昆虫は、探せる限りの食糧を求めてアオイとアスターの最後の花を訪れる。ここ数日澄み切ってひんやりした夜が、今年ももう終わりだと彼らに教えたのだ。ここに棲むミツバチのどれだけが大雪と零下二〇度の冬を越せるだろう。どれだけのマルハナバチの女王蜂が、体が凍って干からびる前に、居心地のよい隠れ家をみつけられるだろう。
 この状況を避けるには、チームとしての取り組みが必要だ。養蜂家だけでなく、昆虫学者も自然保護家も一緒になって奇跡を起こさなければならない。私たちがしなければならないのは土地の酷使をやめること、私達の文化に養蜂と農家の場所を再び組み入れること、そして昆虫を仲間として迎え入れることだ。もしそうなれば、果実園だけでなく、私達のあらゆる努力も実を結ばなくなってしまう。
 人間の努力によってようやく太陽が丘の背後に沈み蜜蜂も元気を取り戻すことが出来た。 家の周囲には野の花と節くれたりんごの木が繁っていた。

 

(完)

 

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