渡辺 碧水
【蜂蜜の性状を変える(八)から続く】
七、蜂蜜の液状を粉末状に変える技術
ここで紹介するのは、蜂蜜をはじめとする、吸湿性が高くべたつきやすい糖類を、流動性に優れた粉末組成物とする方法についてである。
蜂蜜は、蜜蜂によって採集された花の蜜(ショ糖)が、蜜蜂自身のもつ酵素や植物由来の酵素により、主にブドウ糖と果糖に分解された天然の転化糖である。成分は一般的には、水分が約二十%、糖類が約八十%であり、ビタミン、ミネラル、アミノ酸なども含む。
蜂蜜は天然の甘味料として汎用されているが、通常は高粘度のシロップ状であるため、食品素材としては取り扱いが面倒である。
このため、粉末化することによって、取り扱い性を改善する試みがなされている。
蜂蜜を粉末化する方法としては、澱粉やデキストリン、乳糖などの賦形剤を加えて乾燥する方法がある。
しかし、蜂蜜の吸湿性が高いために、乾燥粉末化するためには多量の賦形剤が必要となり、蜂蜜含有量が低くなる上に、保存により潮解しやすいという問題がある。
これらの問題を解決すべく、幾つかの方法が開発されている。
例えば、蜂蜜の吸湿性を抑え、よりさらさらした粉末蜂蜜を得る方法として、賦形剤としてシクロデキストリンや水溶性食物繊維などを用いるものがそうである。これらでも、蜂蜜の甘味の減少、蜂蜜特有の甘味の異質化などの問題が生じる。
これらの課題を解決すべく鋭意研究した結果、賦形剤としてトウモロコシ酸化澱粉、サゴ澱粉、及びサゴ酸化澱粉群から選択した一種以上の澱粉を用いることで、糖類含有量を高くしても、潮解しにくく、吸湿性の高いべたつきやすい蜂蜜などの糖類を流動性が優れた粉末状にし得ることを見出した。
これらの糖含有粉末組成物は、粉末状で取り扱いやすい甘味料として用いられる。
(技術:糖含有粉末組成物及びその製造方法。出願人:株式会社秋田屋本店。発明者:加島優里、渡邉鈴代、川島拓司、中村正。公開日:二〇一五年八月二十四日、公開番号:二〇一五-一四九九四八号)
【蜂蜜の性状を変える(十)へ続く】
(完)
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