ノノ
私が蜂蜜を使った料理で好きなもの、それは蜂蜜卵焼きである。
作り方は、卵液に、料理酒で蜂蜜を溶いたものと、少 々の醤油を入れるだけ。
あとはいつも通りに、フライパンで焼けば出来上がり。
蜂蜜卵焼きを知ったのは、高校生の頃。
家にあった、10年以上前の料理雑誌に掲載されていたのが、出会いの由来。
口に入れると、蜂蜜の柔らかな甘さがいっぱいに広がる。
お砂糖や味醂は、甘みがじわじわ出るのに対し、蜂蜜は一口目から、甘みが直球でくる。
少しの醤油が甘さを引き締め、絶妙なバランスを生む。
口当たりはふるふるで、舌触りが滑らか。ゆるゆる溶けていく。
蜂蜜を使うと、甘さも食感も優しくなる気がする。
たちまち、お気に入りの一品になった。
母も食したところ、私と同様に大絶賛。
試しに母も作ってみたら、私のよりはるかに美味しい。
これを、いつでも食べられたらなあ…。
そこに母から、突然の申出。
「これ、お弁当にも入れようか?」
私の高校時代の昼食は、母のお弁当。
母の卵焼きのバリエーションは豊富だが、まさか作ってくれるとは!
何の迷いもなく「お願いします!」と答えた。
そして翌日のお弁当の時間。
蓋を開けたら、端っこに卵焼きの姿。
見た目は普通だが、蜂蜜は黄金色だから、普段より黄色が濃く映った。
水分がたっぷり含まれていて、上面に滲み出ている。
一口食べ、一緒にご飯も頬張る。
途端にあの美味しさが蘇り、じっくり噛みしめた。
前回は、出来立てほやほやの状態で食べた。
今回は冷めたのを食したが、こちらの方が美味しい。
熱がとんだことで、蜂蜜の甘みと卵の旨味を強く感じたからだ。
心の中で、「お母さん、美味しいよ」と叫んだ。
それ以来、蜂蜜卵焼きは、お弁当の定番になった。
卵焼きは見た目が黄色いため、食べてみるまでは何の味か分からない。
蜂蜜の、あの優しい甘みを感じた時は、毎回嬉しさでいっぱいだった。
今でも食べたくなる、思い出の味である。
(完)
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