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蜂蜜エッセイ応募作品

祖母と蜂蜜~美味しいものは独り占め~

蝶 涼太

 

 今から25年以上前。私が保育園児の頃。自宅キッチンの棚に白い塊が瓶の底に溜まった蜂蜜があった。どうしても白い塊を食べたくなった私は、祖母に「食べたい!」とお願いした。しかし祖母は「腐っているからダメだ」と私のお願いを聞き入れてくれなかった。私は食い下がって「捨てないの?」と尋ねても、「畑の肥料にするから取っておく。体に悪いから絶対に食べるな」と念を押された。

 ある日、早く目が覚めてリビングに行くと、祖母が蜂蜜の瓶をカレースプーンで嬉しそうにかき回していた。私はドアの後ろに隠れてこっそり様子を見ていると、祖母は液体と白い塊の混ざった蜂蜜を食パンに塗って食べていた。

 腐っている蜂蜜を祖母が食べている!祖母が死んでしまう!と、私は大泣きしながら「食べないで!」と祖母に飛びついた。祖母は「間違ってアンタが食べないように、ばあちゃんが食べてあげたんだよ」とニコニコしながら私を諭した。幼いながらも祖母の愛を感じた。

 事の真相に気が付いたのは中学三年生の時。修学旅行で訪れた鎌倉の商店街にある蜂蜜専門店にて店員さんのゴリ押しを断りきれず、私は瓶の蜂蜜を購入した。自宅に持ち帰ってからも瓶を放置していたのだが、数ヶ月後、その瓶を見てみると白い塊が沈殿しているのを発見した。

 インターネットで調べると、どうやら結晶化した蜂蜜らしい。結晶は食べられるとのことで試しに食べてみた。結晶が舌を転がる触感に上品な甘さ。私は一瞬にしてその味の虜になった。

 祖母は「これ美味しいからあげる」と夕飯のおかずをくれることがあった。そんな祖母も、私に蜂蜜の結晶をくれることはなかった。今なら祖母の気持ちが理解できる。本当に美味しいものは独り占めしたくなる。

 そんな祖母を偲びつつ、私は今日もジャリジャリの蜂蜜をトーストに塗って仕事へと向かう。

 

(完)

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