渡辺 碧水
【六角形巣構築の過程(五)から続く】 さて、鳴海らは、「蜜蜂は器用な建築家」との考え方に立ち、蜜蜂を「自己組織化を利用する技術者」であると考えた。 自己組織化とは「構成物間の局所的な相互作用により、大域的かつ自発的に動的な秩序化が起こる過程」をいう。そして「自己組織化を介することで、単純な行動原理から秩序構造が創発しうる」のだそうだ。 研究グループは、蜜蜂が繰り返し行う「造巣の材料である蜜蝋の付着と掘削」という単純な行動に着目した。 そう言われてみれば、巣壁に懸命に蜜蝋片を貼り続ける蜜蜂の姿も、貼り付けた壁を六本の肢で懸命に削り落とす姿も、養蜂家なら日常的に観察できる行動であろう。 蜜蝋片を積み上げる造巣の初期過程では、蜜蝋塊にボトムアップ的な「自己組織化」が起ると想定し、コンピュータによるシミュレーションでその再現を試みた。 ここで、いよいよ最先端研究に基づく科学考証の核心部分が検証されるのだが、やっぱり予告どおり、先に進められなくなった。無知を言い訳に両手を挙げたい。 以前に告白したように、著者には難解で、何が新知見なのかわからない。高度な学術論文を「随筆」の題材にした暴挙に、恥じ入るところ大である。 (四)で挙げた『講演予稿集』収録の「まとめ」を引用して、紹介の結びとしたい。 「我 々はミツバチの行動ルールに基づいて付着 ・掘削モデルというエージェントベースモデルを提案し、そのコンピュータシミュレーションを実行した。その結果、ミツロウの付着と掘削という互いに相反する行動ルールの競合による自己組織化で複雑な構造が創発するという描像により、営巣初期過程が説明できた。これは、ミツバチが自己組織化をうまく活用する建築家であることを示唆するものとなっている」 (追記:読者のために、代理説明をぜひお願いしたい。鳴海氏らの論文を解読した人、あるいは研究参加の関係者の方へ。当エッセイ欄への寄稿の形で、「この研究で得られた新知見は何か」の平易な解説を望む)
(完)
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