渡辺 碧水
【六角形巣構築の過程(二)から続く】
もう少し造巣過程を補足する。
最初、蜂たちは接近して並び、自らの周囲に、腹部から分泌した蝋(ろう)で円管巣穴(巣房)を建築する。これに、蜂たちの発熱と蝋の物理特性とが作用して変化する。
働き蜂の密集で発生する約四十五度の温度によって、蝋は弾力性と粘性のある液状に変わり始め、表面張力により、蝋は三つの円管が交わる点に向かって伸び続け、最終的に六角形の頂点が形成される。
同時に小部屋(巣房)の壁全体も伸び続け、隣接する小部屋同士が直線で結合し、最後に六角形管が形成される。(写真は原著からの引用。巣房の最初⒜と最後⒝の断面)
この研究は、六角形巣房の構築が蜜蜂の工学的高能力によってなされるというよりも、表面張力の単純な物理的力学法則に負うところが大きいことを証明した。
乱暴だが、単純化すれば、働き蜂は「触角で穴のサイズを計測しながら…」ではなく、蝋の穴を熱して見ていると、自然と見事な六角形に仕上がる、とも言える。
このように、構築の仕組みは物理学と数学によって解明できるのだが、研究者は、蜜蜂に対して惜しみない敬意を払う言葉を添えている。
働き蜂が円形の巣房を作ったら、やることはあまり残っていないように思われるが、彼女らはやはり熟練な建築家だ、と。
例えば、頭を動かして垂直方向を測定したり、巣房の軸を水平からわずかに上に傾けて蜂蜜が流出しないようにしたり、巣房壁の厚さを非常に正確に測定したりできる。
これらの行為は、単に表面張力に任せるのではなく、円形の小部屋を理想の六角形に成形するために、重要な役割を果たしている。
蝋を熱し、こね、薄く伸ばすという過程を、必要に応じて正確に行う役割に驚嘆せずにはいられない、とも書き添えている。
カリハルーらの解明も完璧ではなく、まだ未解明な点をいくつか残している。
【六角形巣構築の過程(四)へ続く】
(完)
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