いつも心に花束を
おじさんから最初に蜂蜜を買ったのは二〇年も前になると思う。
あの日、2キロ以上もある大瓶を夫が持ち帰ってきたのだ。
私は「こんなに大量にどうするの!」半ば怒り気味で言ったのを覚えている。
翌日から夫は紅茶に入れ始めた。高校生の長女は部活用にレモン漬けを作り、中学生の次女はきな粉や梅干と混ぜた牛乳ドリンクを飲み始めた。
それを見た姑が「喉にいいから」と蜂蜜大根を作ったり、醤油ダレに加えていつもより美味しい鶏の唐揚げを作ったりした。
気がつくと私の便秘もすっかり解消されていた。
その後も毎年時期になると、夫は大きな瓶を抱えて帰ってきた。
ある時、いつもより五〇〇円安く買ってきた年があった。
おじさん曰く「いつものアカシアが採れず、別の箱の物だから」と言う事らしかった。私たちは笑った。
「そんなの黙っていれば分からないのに」「随分正直なおじさんね」笑いながら家族の間に温かい空気が流れるのが分かった。
あの日から月日が経ち、夫と2人だけになるとチューブの蜂蜜で事足りる生活になった。
そしてつい最近知ったのだが、あの時のおじさんは今年で一〇〇歳になると分かった。「さすが!」懐かしくて、嬉しくて、胸がキュッとなった。
(完)
ツイート
蜂蜜エッセイ一覧 =>
蜂蜜エッセイ
応募要項 =>
Copyright (C) 2011-2025 Suzuki Bee Keeping All Rights Reserved.