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蜂蜜エッセイ応募作品

青春の味

こっち

 

 「草野球チームのマネージャーになってほしい」。クラスで一番のモテ男だったマコトくんは、真っ直ぐにフミちゃんの目を見てそう言った。小学5年生のときのことである。
 「マネージャーって具体的に何すればいいの?」フミちゃんはかったるそうに聞いていたが、まんざらでもなさそうだった。あのマコトくんにストレートに頼まれれば悪い気はしないだろう。
 マコトくんはちょっと戸惑いながら「そうだな。例えば試合でレモンの蜂蜜漬けを作ったり…」
 と答えた。
 草野球チーム。マネージャー。レモンの蜂蜜漬け。何やらずいぶんお洒落な言葉が飛び交って、私はドキドキしながら二人の会話を聞いていた。いま思い返しても二人はかなり背伸びをしていたと思う。自慢ではないが、私の地元はとんでもなく田舎だ。レモンの蜂蜜漬けなんて、見たことも聞いたこともない。
 「うん…。まぁ、なってあげてもいいけど」
 フミちゃんはしぶしぶ承諾した。
 一体いつどこで試合が行われるのか。そもそもこんな過疎化の小学校で人数は集まるのか。私の疑問は尽きなかったが、何より一番興味をそそられたのは『レモンの蜂蜜漬け』だった。私は、試合が開催されることをひそかに祈った。
 結局、何がどうなったのか。卒業するまで試合が開催されることはなかった。草野球大会の開催は、マコトくん一人には荷が重かったのかもしれない。
 あれから三十年。私はいまだにレモンの蜂蜜漬けを食べたことがない。自分で作ろうと思えば作れるのだろうが、なんとなく作らないままこの歳になってしまった。
 レモンの蜂蜜漬けは、私にはお洒落すぎて、手に入りそうで入らない、甘酸っぱい青春の味なのだ。

 

(完)

 

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