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蜂蜜エッセイ応募作品

蜂蜜マーガリントーストと肥満◎

篠原 重雄

 

 きつね色に焼いたトーストに、たっぷりとマーガリンを塗り、どっしりと重たい蜂蜜を寸分の隙間もなくサジで広げる。美味なるこれを、蜂蜜がこぼれて食卓に落ちないように口元へ運ぶと、間髪いれずに大きな口でガブリとかじる。濃厚な甘さが口内に行き渡り、何度も味を確かめるように噛みしめるその至福の時を南向きのLDKで味わえることに、これまで幾度となく感謝してきた。
 蜂蜜とマーガリンの相性はすこぶる良好で、幼少の頃からコンスタントに親しくすることを希望してきた。母国の菓子に欠かせないあんこや、デコレーションケーキを美しく飾る生クリームといった甘いものも未だに好物である。心地よい酔いを産む酒は、若い頃にたいへん慈しんでいたが、ここ四、五年前から肝臓への労りを抱き、ここ数年では、好んで酔うことをやめてしまった。その反動により甘いものが積極的に挙手し、未明の物静かな食卓で、「蜂蜜マーガリントースト」と名乗るかけがえのない好物を想定外に創り出したわけであろう。
 蜂蜜といえども、甘さに比例してカロリーは高めに設定されているのだろう。体重六十五キロ前後をしばらく維持していたのだが、蜂蜜を焼きたてトーストに塗りたくる習慣が毎朝繰り返されると、みるみる体重が増加してゆき、半年たらずで五キロも脂肪を増量してしまった。生涯初とする七十キロは、百六十三センチを測る小柄な身には、確かな肥満として色分けされてしまうのである。体重がここまで容赦なく増えてしまうと、ちょっとした小走りでさえ、呼吸は切れ切れ、心臓の鼓動はバクバクとけして手放しで喜べない。膝への負担を重 々しく考慮すると、早急に前向きなダイエットを意識することはとうてい避けられない。
 蜂蜜を根っから愛する甘党の私は、ダイエットに懸命ながらも、やはり好物は捨てられず、ときおり蜂蜜で微笑みを浮かべている。

 

(完)

 

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