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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

はちみつは父母の香り

藤方 洋子

 

 「うーん、甘い」、朝のスタートは、蜂蜜から始まる。
 長い幼稚園勤めを終え、第二の人生を楽しもうと、古都鎌倉に居を移して数年。お気に入りの散歩コースにひっそり佇む木造の「はちみつ屋」が気になっていた。ある日、思い切って店内に ・ ・ ・ ・それが、私と蜂蜜との第二の出会い。
 お店の人から、蜂蜜には草花によっていろいろな味があること、また、甘くておいしいだけではなく、様 々健康に良いことなどを説明いただいた。「量り売りもしています」という、なんだか懐かしい香りのするお店の雰囲気も気に入り、いつのまにか数種類の蜂蜜を手に自宅へ戻っていた。
 さて、翌日からの私は、のどが痛いと言えばひとさじの蜂蜜、肌の乾燥が進んだと感じればお風呂場での蜂蜜パック、お腹の調子がもうひとつの時にも出番は蜂蜜ドリンク。熊のぷーさんごとく、蜂蜜が手放せない日 々となった。
 そう言えば、すでに数十年も前のこと、上京したての私に届く父母からの小包には、必ずと言って良いほどビン詰の蜂蜜が入っていた ・ ・ ・ ・。あの時が蜂蜜との初めての出会いだったのかもしれない ・ ・ ・。父母が出会わさせてくれた蜂蜜、長い年月を経て日 々その効果を実感する度に、その時には気づくことができなかった今は亡き二人の思いに胸が熱くなる。
 リンゴ ・ひまわり ・ブルーベリー ・ ・ ・ ・、季節を変えて様 々な蜂蜜の味を楽しみながら、今は亡き父母との日 々に思いを馳せる。
 「さぁって、今夜は唇にちょっぴり蜂蜜パックで、明日のお出かけに備えようっと。」

 

(完)

 

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