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蜂蜜エッセイ応募作品

孫と蜂蜜

平林 紀子

 

 昨年の暑い夏の朝。孫が自分の部屋に来て、と呼んでいる。「何だ? どうした」
 天井を指差し、この丸いシミから甘い汁が垂れてきて、寝ていると丁度顔にあたってくると言う。部屋は南向きの二階。上がってみてみると、シミの真ん中から今もポタリポタリと蜜のようなものが落ちてくる。
 「これは…大きなものを作っているぞ」
 急いで孫に大きなごみ袋を三枚用意しろと言い、手渡された一枚を頭に被った。二枚のごみ袋を手にし、部屋から孫を出した。覚悟して、ノコギリで天井に切れ目を入れ、天井を開ける。そっと覗きこむと、ブンブンと飛び回る蜂たちは、屋根との境目に大きな巣をこしらえていた。ゴム手袋をした手で慎重に取り除き、袋に入れ固く縛る。天井にはまだ沢山の蜂が元気よく飛び回っていて手にかき集めようとしても、簡単には袋には入らない。観念して、天井板を取り外すと一斉に飛び立つどころか部屋中蜂だらけで、数時間かけて部屋から蜂を追い出した。
 業者に袋ごと蜂の巣を引き渡しているところを、孫は名残惜しそうな顔付きで見ていた。
 「じいちゃん、今度蜂の巣が出来たら大きなものが出来たらいいね」
 「大変だったんだぞ、勘弁してくれ」
 今年、孫がまた甘い汁が天井の同じシミから落ちてくると喜んでいる。自分も舐めようと、蜜が落ちる場所に口を開けて待っていた。一滴の蜂蜜が口に入ると幸せに感じる甘味が広がる。
 「じいちゃん、僕も!」孫と蜂蜜の取り合いは楽しくて、妻もやってきた。
 「何だか面白そうなことしてるわね、私もしようかしら」 
 妻は大きな口を開けて蜂蜜が垂れるのを待っていた。

 

(完)

 

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