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蜂蜜エッセイ応募作品

ささやかな幸福

水穂 真弓

 

 ハチミツを買ってくると、パンケーキを焼くのが楽しみになる。琥珀色の瓶の中で、ゆったりと輪を描き泳ぐハチミツが、匙からしたたる金色の筋となり、焼きたてのパンケーキに広がる。一緒に添えたバターが柔らかく溶けだしたのを、ハチミツが絡めとっていく様子を眺めるのは楽しい。

 

 十年以上前、一人暮らしをはじめたばかりの頃から、ハチミツを見て回るのが楽しみだった。テディ・ベアのかたちをした瓶や、手毬のような丸い瓶、外国語でかかれたラベルの色鮮やかさ。食料品売り場の中、そこだけがおもちゃ箱のように賑やかだった。思わず買ってかえったハチミツを眺めていると、何度でもパンケーキを焼きたくなった。

 

 そもそも、私がハチミツを愛好しはじめたのは、健康に良いらしいという単純な理由からであった。流行りの健康法やダイエット法などは、いくつ手を出しても続いた試しがなかったが、ハチミツに関しては飽きずに食べ続けているのは、その豊かな香りにすっかり魅了されてしまったからである。

 

 今日も、目新しさに魅かれて山桜のハチミツを買って帰ってきた。レンゲ、クローバー、蜜柑、コーヒーなどの花による違いはもとより、日本、カナダ、ハンガリーなど産地による個性もあって、新しいハチミツと出会う度に新鮮さに心が踊る。

 

 テーブルの上の真新しいハチミツの瓶を、私は開けた。この文章を書いている今は2月の始めの頃なので、キッチンに差し込む冬の日光はまだまだ弱々しかったが、黄金色の蜜は太陽を凝縮したように輝いていた。

 

 山桜のほのかな香りをかぐと、一足早い春が我が家に訪れたような気がした。

 

(完)

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