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蜂蜜エッセイ応募作品

トッちゃんだけの蜂蜜飴

渡辺 碧水

 

 七九歳の私は、ケアハウスに入居中の九三歳の姉を月2回の割合で訪問している。もうすぐ十二年目に入る。1時間程度、あれこれとりとめもない話をする。お互いに以前に何を話したかをすぐ忘れるので、何度も同じ話をしては、新鮮な話として「ホー」とか「エー」とかを繰り返す。歳が十四離れているので、同じ話題なのに、1時代違うせいか少しずれる。そこがおかしく、大笑いして次の話題に移る。
 しばしば話題に上るのは、近隣村に住んでいた、母の弟にあたる叔父の家のこと。その思い出によく出てくる話は、私が五、六歳前後と思われるが、「蜂蜜飴」のこと。篤農家で多才な叔父は、農業の傍らいろいろと挑戦していて養蜂もやっていた。
 私の記憶にはそれしか出てこないのだが、母や父に連れられて行くと、「トッちゃんか。よう来た、よう来た。すぐ作るから、ちょっと待っててな」と叔母はすぐに取りかかる。
 蜂蜜をたっぷり鍋に入れて煮詰める。そして、割り箸にぐるぐる絡めて水飴ふうにして、「さあ、お食べ。混じり物なし、トッちゃんだけ!にだよ」。こぶしをはるかに超える大きさ。ペロペロなめて、伸びた所はかぶりつく。旨いのなんの。叔父の家に行くとなると、そのことしか考えられなかった。今でも唾を飲み込む。
 朝食のパンに蜂蜜をたっぷりぬるのはもう何十年も続く私の習慣だが、もしかすると、高齢出産で母乳不足だったそうだから、既に赤ん坊の時に蜂蜜の「刻印づけ」があったかもしれない。
 姉のほうの話は更に数年さかのぼる。「十歳代の娘にだよ」と強調しながら、身振り手振りで大変さを物語る。山野に設置の巣箱に行って、面布をかぶって採蜜作業の手伝いをさせられた。蜂に攻撃されて、しばしばさされた恐怖の記憶が鮮明で、良い思い出にはなっていないようだ。
 それでも、作業時の手に付いた蜜をなめる役得が頻繁にあり、濃厚な独特の旨さはやはり忘れていなかった。

 

(完)

 

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