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蜂蜜エッセイ応募作品

じいー、じいー、ハチミチュ!

儀間 眞一

 

 「じいー、じいー、ハチミチュ!」と朝から催促がある。
 娘夫婦と孫二人が新居へ移転する前の数ヶ月間、我が家に同居した時のことである。
 孫たちは、新居に近い幼稚園へ毎日元気に通園している。朝食のメニューは、食パンとママが作った少量のおかずである。上が男の子、下が女の子である。朝から催促したのは、女の子の方である。
 「はい、どうぞ」と手渡すと、最高の笑顔を返してくれる。手渡されたチューブ入の蜂蜜を器用に自分のパンの上に大事そうに広げて行く。正に、パン職人さんが、美味しいパンを大切に作る時の手つきそのものである。また、この動作をする時には、決まって幼稚園で習っている歌を口ずさんでくれる。その歌声を耳にすると、家族の皆が朝から優しい気持ちで一杯になった。
 「じいー、じいー、ハチミチュ食べれば病気しないよ。」
 「ママがそう言ったから、ワタチ食べるのよ!」
 なるほど、ただ甘くて美味しいから欲しがったわけではなかったのだ。ママの話しを真剣に聞いていることが分かって、孫の成長に目を細めた。時 々、私にもハチミツ付き食パンを「どうぞ!と言って渡してくれた。本当に美味しいので、以後、私自身の朝食メニューにも加えるようになった。
 現在、娘夫婦一家は、すでに新居で賑やかな生活を開始している。孫たちも新しい環境にすぐに慣れ、いつも笑顔一杯で元気な毎日を送っている。近所なので、頻度多く、会いに来てくれている。朝食時に、私の耳元には、いつも孫の元気な声が聞こえて来る。
「じいー、じいー、ハチミチュ!」
 今では、我が家を元気にしてくれる一番有難い声である。蜂蜜を自ら食パンに塗りながら、娘一家の方角へ向かって呟いた。
「いつまでも、元気に伸び伸びと成長しようね。」
「さあー、きょうも孫たちに負けないように楽しく生活しよう!」

 

(完)

 

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