さて、ここからは蜜蜂の活動の様子が描かれます。
「この蜂、春の彼岸より10月中旬までの間、樹脂と蝋分あるものを多く採り来たり。」
春の彼岸ですから3月20日ころから10月中旬、太陽暦では11月中旬までの間ですね。
樹脂というのはひょっとしてプロポリスのことですかね?
そして蝋分ですから巣の材料になる蜜ろうを多く集めると言っていますね。
「淡黄色の蜜蜂は、その形が黄蜂に似て小さく、長さようやく3、4分、全身微黄色毛茸ありて背の淡黒羽の灰白色なり。」
1分をおよそ3ミリとすると、3、4分といえば11ミリくらいの大きさです。
「この蜂、人はイモムシといえども刺すことは少なく、もし刺したときは針がぬけて死んでしまう。」
よく分かりませんが働き蜂のことでしょうか?
「蜜蜂には野生と園生とありて、その野生の者は黄褐色にしてやや透明な房を作る。その形は扁平が少なく、両面に多くの蜜房がある。これを側面に立ち連ね、互いに軸をもって繋ぎ、あるいはその一隅を堂に接して作り、」
野生のミツバチは黄色で、巣も透明感があると言っているようです。
確かに和蜂の駆除に行って見た野生のミツバチの巣は、白くて透明感があり、形もダイナミックできれいだったような気がします!
「小窠ごとに卵を着け、花の蜜を採り来たりて蜂子に食餌をやり、上に白膜を覆い、また冬月の糧にするために別の巣に多くの蜜を貯える。」
ここは小窠の様子ですね。
小窠とはひとつひとつの小さな穴、つまり蜜房のことですね。
空いている蜜房には卵が産み付けられ、成長中の子には花粉や蜂蜜が与えられます。そしてその他の蜜房には蜂蜜が貯えられていき、冬期の食糧になります。
白膜というのはおそらく蜜蓋のことで、そこに溜まっている蜂蜜こそ、完熟蜂蜜なのでしょう!
食べた~い!!(笑)
そして巣箱の観察が始まります。
「蜜堂に出入り口の外に4、5匹看守する蜂ありて、出入りを検査し、他のものの入るを禁ずる。かつ空手にし、帰る蜂は敢て中に入るを許さず。その怠りを責るに似てり。」
巣箱の入り口に門番がいるというのです!
しかも出入りするミツバチをくまなく監視し、もし蜜も花粉も持ち帰ってこない者を見つけたら、
「なにをしておる!もう一度行って来い!」
と怠りを見逃さないといいますからスゴすぎだっ!!
次は越冬についての話になります。
「10月の末より翌2月頃まで、堂中に蟄して彼の蜜を食う。
故に蜜を切り取ること多きに過ぎるときは、動とありせば飢えに及ぶことあり。」
冬の間蜜蜂たちは、それまで蓄積していた蜂蜜を食べて過ごします。
人も同じで、今はそんなことはしませんが、昔は冬場でも蜜を切って食べていたのでしょう。
ところが切り取りすぎるとミツバチが飢え死にしてしまうと言っています。
「この時は、皿に蜜を盛って堂に入れて、その不足を補う。」
そんな時はお皿に蜂蜜を盛って不足を補ってください、という注意書きですね。(笑)
「かつ寒気も恐しきものなれば、ムシロにて堂を包みて暖所に置くなり。」
そして寒さ対策、ミツバチの巣箱は筵でくるんで温かい場所に置いてくださいという補足ですネ。
さていよいよ採蜜作業の説明に入ります。
「蜜を採るには大抵夏至の6月下旬の後、房の3分の2を切り取ってその一部は残し置くなり。」
まずは時期ですが、夏至の6月下旬以降で、採る分量は房の2/3。
全部採ってしまうと滅びてしまいますね。
そしてここには書いてありませんが、その際女王蜂を残しておかないとまずいですヨ!
「防州にては、秋の彼岸前後を適度にこれを切り、蜜堂の後面の戸を叩けば蜂みな全面に去る。
これにおいて戸を開き、小刀にて随意に切り取り箱を前に向け直し置かば、元の如く房を作る。」
防州で行われているコツが記されていますね。
「しかしながら一時に前後左右を切らぬよう注意すべし。
もし前後より一時に切り採りをば、蜂来て人の面を刺すことあり。」
欲張っていちどきに採ると蜂に刺されますよ!(笑)
「これを防ぐは図の如し。
粗布にて作りたる面をおおいその業をなすなり。」
おおっ!養蜂具が出てきましたね!
いわゆる綿布です。
「又、手の及ばぬところは器械にて掻きだすなり。
切り採りたる房は布を敷くに、竹カゴあるいは篩(ふるい)の中に入れ、これを瓶の上におくと、日温のところに置けば蜜自ら流出して、その色黄褐にして飴の如し。」
遠心分離機など使いません。
いわゆる古式養蜂における採蜜方法ですね。
これは当場でも行っています。
「このようにして採るものを「タレミツ」という窠上品なり。」
「窠」という漢字は現在ほとんど使われていませんが、蜂の巣を表わすもののようです。
なんとも美味しそうですね~!