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中国アカシア蜂蜜視察紀行(20)《中国青年の反日感情》

《中国青年の反日感情》

昼食は五丈原周辺の名物である『臊子面』なるものを食べた。
「もしかしたら孔明様も食べたかもしれない?」
と思いながら口にすると、その味はすっぱくてちょっと辛く、やはりここの麺も日本のラーメンやそばやうどんとまったく違う。

総一郎さんは「原料は小麦粉だ」と言うが、どちらかというと米粉で作った麺に似ており、お世辞にもあまり美味しいものでない。

今晩は西安から飛行機で移動して上海だ。

五丈原から西安咸陽国際空港へ向かう車中、
「中国の反日感情というのは現在どれくらいあるのですか?」
僕はずっと気になっていたことをノッポさんに尋ねた。

尖閣諸島の問題や環境問題や食料品問題等、いわゆる中国問題は日本において報道を賑わす昨今である。
かつては両国間では日中戦争が行われ、日本は侵略による満州国を樹立して、南京虐殺などの非道なこともやってきた歴史がある。
当時の事実を記憶に刻む者は、日本に対して反感を抱くのは当然で、その点においては日本は深く反省しなければならないだろう。
しかし国交が正常化してはや42年、実際の中国人の日本に対する感情はどうなのか?

ノッポさんはしばらく考えている様子だったが、やがて、

「反日感情というのはあまり感じたことはありません」

と答えた。

ノッポさんは学生時代日本に留学し、以来ずっと日本に在住するいわば中国人の中でも突出した親日家であろう。
彼のご両親は日本に対してあまり良い印象は抱いていなかったようだが、帰京するたび誤解を解いてきたと語る。

尖閣諸島問題についていえば、
「小学校の教科書にも尖閣諸島は中国の領土であると出ていたし、そう学んだ」
と言う。

「確かに反日のテレビ番組を見て、反日教育を受けた人もいますが、現在の実態としては、日本の企業がたくさん中国へ進出していますし、日本の技術、日本のソフトパワー、民間レベルにおいての様々な方面で交流が盛んになっています。
そして中国ではいま、日本食が好き、日本製の電気製品が好き、日本アニメが好きな若者がたくさんいます」

ノッポさんは車を運転中の地元ドライバーにも聞いてくれた。
するとドライバーの彼はこんな話をしてくれた。

彼の家も養蜂業をしているが、つい最近まで“藤原さん”という名の日本人が一緒に働いていたという。
藤原さんは終戦のとき日本に帰れなかったいわゆる残留日本人で、ドライバーの彼がまだ子供の頃に出会った。
非常に真面目で人柄も良かった藤原さんを通して、日本に対する反感など微塵も持たなかったと言う。

ノッポさんは、
「イギリスが香港を中国に返還した頃の話です」
と、ある報道番組で、農村に暮らす一人の女性のインタビューの答えが印象に残っていると言った。

『香港が戻らなくても私は農民です。
香港が戻ってきても、私は相変わらず農民です』

要するに「対外政策」だ「愛国」だと叫ぶ前に、中国政府は私たちの生活をなんとかしてくれ!という貧しい庶民の健気な訴えである。

「年寄りの人たちは分かりませんが、若い世代の私たちが生活している中で、反日感情なんてほとんどないのではないでしょうか?」

と、それはドライバーの彼もノッポさんも同じ意見であった。

なるほどそれは日本でも同じような気がする。
ただマスコミの報道に偏りがちな日本人は、悪いところだけを聞いてそれを中国だと認識しているケースがあまりに多い。
ところが実際は両国の政治的関係がその認識を作り出している原因のほとんどで、両国の庶民はただ振り回されているだけのように思えるのだ。

テレビや新聞などのマスコミによる影響力は、ともすれば時代の考えの潮流になりがちだが、実は庶民の生活というのは、そんなものとはかけ離れたところにある。
マスコミとか報道は、本来弱い立場の者の味方をすべきではないかとはちぶんも思う。

文化や考え方が違っても同じ人間であることに違いない。

中国語がまったく分からないはちぶんも、食事やタバコの交換を通してリュウさんやワンさんとも友達になれた。
互いに歩み寄れば政治やマスコミの壁など乗り越えられることができると思いたい。

その意味からも、いま我々がしている民間交流こそ、明日の両国の希望なのだ。

西安市を抜け空港を目指す車窓から、中国漢時代の皇帝や王子の陵墓がいくつも見えた。

ファイル 641-1.jpg

「あれは武帝の孫の墓です。
あれは西漢時代最後の皇帝の墓です。
陵墓は山になっていますが王子のものはてっぺんが丸く、皇帝のものは平らになっているんですよ」

ドライバーが説明してくれる話を聞きながら、

国境がなくなるのはいつの日か―――?

遠い異国ではちぶんは思った。

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