《『海泉湾維景大酒店』トイレ事件》
部屋に戻ってトイレに入った。
ところが―――
水を流そうとしたところが最初ちょろりと流れただけで、それからは全く流れない。
「こりゃいかん!」
と、酔いで頭をクラクラさせながらあちこち動くところをいじっていたら、
ポチッ!
と押してしまったのが『非常連絡』のボタンであった。
すぐさまフロントから電話が入り、電話口の向こうから訳の分からない中国語が飛んできた。
「わたしゃ中国語わからんアルね。ごめんなさい、間違えました!」
と日本語で対応したが、間もなく総一郎さんが「どうしましたか!」と飛んできた。
仕方がないので、水が流れない事情を話したら、
「日本に比べて中国のトイレはあまりよくないね」
と言いながら、水を溜めるタンクの蓋を開いて弁を調節したら、その後は水が弱々ながら流れるようになった。
翌日ケンちゃん社長にその話を伝えたら、
「オレのトイレも流れないんだよ」
と、どうやら一晩中そのまま流さないでいたらしい。
「おまけにバスの栓も外せなかったから、強引に指ではずしたよ」
そういえばはちぶんの部屋も同じであった。
しかしいろいろ動かすことが好きなはちぶんの場合は、給湯口をものすごい力で回せば栓が空くことを発見していたから、そのことを社長に教えてあげた。
見た目は豪華で申し分ないが、細かいところで「残念っ!」が多い中国のホテルであった。
それはそうと
「今日こそはブログを更新しなければ!」
と、PCを出してインターネットにつなげてみれば、今度は無事に接続できて、養蜂家の王さんのことを記事に書いた。
横になってテレビを付けたら、これが共産主義の国なのか?と思うほど賑やかなバラエティ番組が放送されていた。
街の様子もテレビの内容も、だんだん現代の日本の文化に近づいていることを感じた。