ミツバチと共に90年――

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中国アカシア蜂蜜視察紀行(16)《蜂蜜談義と日中友好》

《蜂蜜談義と日中友好》

リュウさんは上機嫌で
「さあ飲んでくれ、飲んでくれ」
と、人に大白酒を飲ます飲ます。

おまけにワンさんまでがカワイイ顔で、
「はちぶんさん、乾杯しましょ」
と杯を持たせるものだから、単純なはちぶんはいい気分になって、アルコール度数のことなどすっかり忘れて、二日目の今晩もベロンベロンになってしまった。

旅慣れたキャリーさんは上手なもので、注がれた大白酒を水で薄める現場を、ケンちゃん社長はしっかり目撃していた。

その間、はちぶんがブログでやっている『はちみつトッピング』で、蜂蜜と何を混ぜたら美味しいかなどの話をしていたが、これまで蜂蜜に関して思っていた疑問をキャリーさんにぶつけてみることにした。
それはもしかしたら蜂蜜を販売する上で最も重要で、かつ根本的な重大問題であるかも知れない。
ともすれば、夜を徹しても結論を見い出すことはできないだろう。

「西洋では大昔から蜂蜜が生活の中にあったのに、日本や中国などの東洋では、どうして蜂蜜は一般的にならなかったのでしょう?」

するとキャリーさんは、
「パンにつけると美味しいからでしょ!
私パンにつけて食べるの大好きなの!」

(おい、それが結論かい!はやっ!)

しかし案外その通りかもしれないと思う。
地域によって気候も地質が違えば当然食材も違って、生まれる食文化はその地域独自の料理を生み出すわけだ。
西洋の主食は小麦からできるパンであるのに対し、日本はお米であり、中国はお米もそうだし饅頭や麺などである。
東洋の主食は蜂蜜で甘くして食べるというより、香辛料で味付けをしたり、日本のように旨味を追及するといった方向へ向かったのも必然だったかもしれない。

しかしはちぶんの持論はこうである。
それは西洋ミツバチと、東洋ミツバチ(日本蜂もこの仲間)の性質の違いである。
西洋ミツバチは養蜂しやすいが、東洋ミツバチは非常に飼うことが難しいためだということだ。
今日見て回った養蜂家も全て西洋ミツバチだし、どうやら蜂蜜需要量のこの格差は、ミツバチの種類によるものではないかと考えている。

結論はどうあれ、とにかく蜂蜜を売らないからには商売は成り立たない。

時間は0時近くになっていた。

「そろそろお開きではないか?」

そんな雰囲気が漂った時、総一郎さんが、
「日本では宴会の席ではどのように終わるのか?」
と聞いてきた。

「社長、あれをやりましょう」
『あれ』とは長野県の北信地方で、酒の席のお開きの場面で一般的に行われる『一本締め』のことである。
本来なら『謡い』など交えてやるが、ケンちゃん社長もはちぶんも『謡曲』を知らない。

僕は一本締めのやり方と「あるを尽くして」の意味を説明し、ならばその前に中国の『乾杯』をしてからそれをやろうということになった。
中国と日本では『乾杯』の意味も発音もほぼ同じなのだ。

リュウさんが音頭を取って
「乾杯!」
続いてケンちゃん社長が
「よ~~~おっ!」
と言った後、全員で「シャン!」と手を叩いた。

中国の国土から見れば、それは非常に小さな小さな人と人とのつながりかも知れない。
しかしそれは、やがてとてつない大きな友情の流れになることを信じて、皆で拍手をし合った。

「ではみなさん、あるを尽くして歓談を続けましょう」

と再び談話が始まり、宴会は続く。

暫くして再び総一郎さんが、
「ほんとにこれで最後という終わり方はないのか?」
と聞いてきた。
「ないこともないが『三三七拍子』というのがある」
と言ったら、
「明日も早いし、それならそれをやって終わりましょう」
と言った。

ケンちゃん社長は「オレはもうダメだ」と言うし、仕方がないのではちぶんが音頭をとることになった。

「では皆様、お手を拝借。
日本と中国の友好を祈念いたしまして、三三七びょーし!」
「♪♪♪、♪♪♪、♪♪♪♪♪♪♪」
「よっ!」
「♪♪♪、♪♪♪、♪♪♪♪♪♪♪」
「はっ!」
「♪♪♪、♪♪♪、♪♪♪♪♪♪♪」
拍手~!!
きっとそこにいた全員が、政治的な思惑のない日中友好を願っていたに違いない。

はちぶんはヘベレケになって部屋に入った。

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