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中国アカシア蜂蜜視察紀行(2)《中部国際空港セントレア》

【初日】

《中部国際空港セントレア》

5月23日金曜日、午前0時―――。

前回ケンちゃん社長が山東省へ行ったときは、中央タクシー(地元のタクシー会社)を使って中部国際空港セントレアまで直行したので今回もそうする予定だったのが、あいにくその日は予約がいっぱいで、仕方なくはちぶんの“す~カーパー”に乗って行くことになった。

運転は僕。
連日採蜜作業で朝が早くて、ろくに寝ていないケンちゃん社長に運転させるのは極めて危険なのだ。
それでも助手席でずっと眠い目をこすって、話し相手をしてくれる優しい社長であった。

2日前に届いた最終スケジュールでは、初日と二日目の宿泊場所が西安市から宝鶏市に変更されていた。

宝鶏市は西安市から西へおよそ150キロほど離れた陜西省第二の都市であるが、なぜスケジュールがころころ変更されるかというと、現地の養蜂というのは花が咲く場所へたえず移動しながら採蜜するいわゆる“移動養蜂”が一般的で、アカシアの花の咲き具合によって、養蜂家の居場所が刻一刻と変化するからである。

一瞬、
「なんだ、西安に泊まらないのかあ……」
と気落ちしそうになったが、事前に向こうの情報を調べているうちに“ものすごいこと”が判明した。

それは『シルクロード』や『西遊記』や『遣唐使』などよりも、はちぶんにとっては“超ウルトラスーパーすごい事!”であった。
それは、西安市から宝鶏市へ向かう途中に、

『五丈原』がある!!

ということだった。

知らない人のために説明しよう。

『五丈原』とは『三国志』に出てくる天才軍師『諸葛亮孔明』終焉の地なのである!!!

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『三顧の礼』によって劉備玄徳に仕えて『天下三分の計』を唱え、『赤壁の戦い』では驚く知恵で一夜にして10万本の矢を得て当時最強の武将であった魏の武将曹操を破り、天の利、地の利、人の利を巧みに読み、臨む戦は百戦錬磨、劉備亡き後もその遺志を継ぎ、泰平の世を実現しようと身を粉にして戦った男―――。

要するに、諸葛孔明ははちぶんが歴史上で最も尊敬する人物の一人で、僕にとっては孔明“様”なのだ!

「よ、よもや、あの五丈原に行けるかもしれない!」

その大きな期待は興奮を呼び覚まし、気持ちが高鳴り、昨晩などろくに眠れなかった。

車の中でその興奮を社長に伝えてみたが、ケンちゃん社長は「ふ~ん」と言って眠そうだった。
しかしはちぶんは固い決意をしていた。

「わざわざ日本から、あの広い国土を持つ中国の内陸部まで行くのだ。
そして一生行くことはないだろうと夢物語に思っていた五丈原の近くを通るからには、是が非でも足を延ばして行かねばならぬ!
ノッポさんに会ったらまずこの思いを伝えねば!」

しかしあくまで現地視察という仕事で行くのに、私情など理解されようはずもない。
そこではちぶんは考えた。

「これは鈴木養蜂場のブログにどうしても必要なネタなのだ!」

思いが通るかは分からないが、とにかくこの方向で口説いてみよう!

と、それとなく社長に話してみたら別段反対する様子もない。
社長さえ味方につければこっちのものだ!

ノッポさんとは6時40分に、中国東方航空のチェックインのところでの待ち合わせだった。
社長もはちぶんも中国語は話せないので、ノッポさんがいなければ視察どころの話でない。

中部国際空港セントレアの駐車場に到着したのは待ち合わせ時間の約2時間ほど前で、人けの少ないロビーで少し気が早かったかと社長と顔を見合わせた。

やがて姿を現したノッポさんに、さっそく五丈原の話を持ちかけた。
ところがノッポさんは五丈原どころか諸葛孔明の名すら知らない様子で、ポカンとした顔をしている。

(おいっ!君は中国人のくせに、あの超有名な諸葛亮孔明様を知らんのか~っ!)

口には出さないが
「こりゃ行くのは難しいかもしれん……」
と、落胆の溜息を落とさずにはいられない。

ノッポさんはしきりに中国語のガイドマップを広げてくれたが、やがて出た言葉が、
「実は宝鶏には泊まらないことになりました。今日と明日は西安に泊まります」
と涼しい声で答える。

(は、話が違うではないか……!)

はちぶんの夢はこの時点で無残にも砕かれた。

それでも心優しきノッポさんは、スマホで諸葛孔明や五丈原を調べてくれて、ガイドマップでその位置を確認すると、
「ここなら行けるかも知れませんね」
と、わずかに望みをつないでくれた。

(いいよいいよ、無理に話を合わせてくれなくて……。
行けなかったらいっそうみじめになるじゃない……)

はちぶんはひとり喫煙所にこもり、溜息を落として日本での最後のタバコをふかした。

しばらくして、別の仕事で同行するアラフォー女性がやってきた。
仕事で世界を飛び回るいわゆるキャリアウーマンなので、彼女のことを『キャリーさん』と呼ぶことにした。

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