今日から、先日行った中国の視察旅行の様子を、「紀行」と題して小出しにご紹介していきますネ!(笑)
『中国甘粛省 アカシア蜂蜜現地視察紀行』
※この「中国アカシア蜂蜜視察紀行」は、事実に基づく筆者はちぶんの主観的物語です。
《出発前夜》
実はケンちゃん社長から、中国養蜂の現地視察同行を求められたのは昨年のことだった。
「同行してその行動の様子を記録してほしい。
うちで扱っている中国産の蜂蜜は完熟でしかも良質であるが、どうにも世の中の中国産蜂蜜に対するイメージは最悪で、なんとか払しょくさせたいのだ」
と、熱い情熱にほだされた僕ことはちぶんだったが、その時いまひとつ乗り気になれなかったのは、前回社長が渡中したのは山東省で、歴史や文化好きな僕にとってあまり魅力を感じられない場所だったことによる。
「どうせ行くなら世界的な文化遺産の残るところに行きたい」
という、半ば観光旅行を期待しているよこしまな根性からだった。
ところが
「今年の山東省の蜂蜜の出来はいまいちで、今回は内陸の甘粛省へ行くことになった」
と当初のスケジュール表を見せられたとき、宿泊場所になっている『西安』の文字が目に飛び込んできたのだった。
「西安に泊まるんですか!」
思わず声をあげた僕の頭に、『シルクロード』のロマンと『西遊記』の物語が同時によみがえったのである。
西安―――
そう!
そこはかつて中国が『唐』と呼ばれた時代、唐の都『長安』があった場所ではないか!
シルクロードの始点であり、かつ、遥か西の天竺(インド)を目指して孫悟空という妖怪を伴った玄奘三蔵が旅立ったのも長安だった。
日本では聖徳太子の時代、遣唐使を送って大陸文明を学んだのも、そこ唐の都長安ではなかったか!
「行きましょう!中国へ!」
現金なはちぶんの態度は、そのとき180度ひるがえったのだ!
天安門事件が起こる前だからもう25年以上前、一度北京と天津に行ったことがあるから実は二度目の中国訪問となるが、西安へはもう行くこともないだろうとあきらめていたから、思ってもない幸運の到来である。
5月15日、視察協力会社の中国人がスケジュール調整のため鈴木養蜂場に訪れた。
はちぶんは現地視察に同行することになる通訳兼務の彼と初めて会って、社長と一緒に話を聞いたが、その中国人の話しぶりと温和な態度から、彼の誠実な人柄が伝わってきた。
なにより驚いたのはそのひょろりとした背の高さで、聞けば、
「190センチあります」
と、流ちょうな日本語で答える彼を『ノッポさん』と呼ぶことにした。
長野出発が23日の夜中の0時。
「海外でケータイが使えるか携帯電話会社へ行って確認した方がいい」
少し前にそう言われていたが、
「社長のケータイが使えるのだから僕のだって使えるだろう。最悪ケータイなんかなくてもいいや」
と最初は安易に考えていたが、出発が近づくにつれ
「迷子になったらどうしよう」
とか
「日本から緊急の連絡があったらどうしよう」
とか、だんだん不安に駆られて、出発する日の日中、やっぱり確認しておくことにした。案外小心者なのだ。
するとauの店員さんは、
「この機種は海外では使用できません」
と無情に答えた。
スマホやiフォンが主流になっている現在、はちぶんが愛用している黒い折り畳み式の携帯電話は、auから無料で与えられたもはや骨董ともいえる代物なのだ。
レンタルもあると教えられたが「今晩出発だ」と言ったら、親切にいろいろ対応してくれはしたが、結局間に合わないことが分かった。
「もっと早く行動しとけよ!」
自分を叱責したが後の祭りで、
「気休めに持っていこう。時計代わりにはなるだろう―――」
とあきらめて、それから少し仮眠をとって、いよいよ出発の時間を迎えた。