ミツバチと共に90年――

信州須坂 鈴木養蜂場

はちみつ家

Suzuki Bee Keeping

サイトマップ RSSフィード
〒382-0082 長野県須坂市大字須坂222-3

記事一覧

島崎藤村の「ふるさと」に出てくる蜂

島崎藤村を読んでいると、ときたま蜂が出てきます。

中でも彼の幼少期を題材に書かれた「ふるさと」という作品には、木曽で過ごした日常生活が生き生きと描かれ、蜂もしばしば登場します。
特に第44項のタイトルが「蜂の子」。
蜂の子が生活の中にごく自然にあったことが知れます。

『地蜂という蜂は、よくよく土のにおいが好きと見えまして、地べたの中へ巣をかけます。土手の側のようなところへ巣の入口の穴をつくっておきます。蜜蜂、赤蜂、土蜂、熊ン蜂、地蜂――木曽のような山の中にはいろいろな蜂が巣をかけますが、その中でも大きな巣をつくるのは熊ン蜂と地蜂です。』

そして蜂の子を佃煮にして食べるんだという話が出てきます。

『父さんの田舍の方ではあの蜂の子を佃煮のようにして大層賞美すると聞いたら、お前達は驚くでしょうか。一口に蜂の子と言いましても、木曽で賞美するのは地蜂の巣から取った子だけです。蜂の親は食べませんが、どうかするとあの巣の中からは親になりかけたのが出て来ます。それを食べます。(中略)もしお前達が木曽でいう『蜂の子』を食べ慣れて、あたたかいご飯の上にのせて食べる時の味を覚えたら、
「父さん、こんなにおいしものですか。」
と言うようになるでしょう。』

まさに当場で扱っている「ハチの宴」という蜂の子商品のことですネ!(笑)
面白いのは、その後、蜂の子の見つけ方が書かれているところです。

『ある日、友おじさんは裏の木小屋の近くにある古い池でカエルをつかまえました。土地のものが地蜂の巣を見つけるには、まずカエルの肉を餌にします。それを友おじさんはよく知っていましたから、細い竿の先にカエルの肉をさし、飛んで来る蜂の眼につきそうな場所に立てて、別に餌にする小さな肉には紙の片をしばりつけて出しておきました。ちょうど釣りをするものが魚を待っているように、友おじさんは蜂の来るのを待っていました。カエルの肉を食べに来た蜂は餌をくわえて巣の方へ飛んで行きますが、その小さなカエルの肉についた紙の片で巣の行方を見定めるのです。』

なるほど、スズメバチの駆除の際、巣を見つける時に使う手法と同じです。
地蜂というのはクロスズメバチのことですから肉食なんですね!

『こうして友おじさんは近所の子供達と一緒に、ある地蜂の巣を見みつけたことがありました。地蜂の巣を取りに行くものは、巣の出入口へ火薬を打ち込んで、たくさんな親蜂が眼を回している間に獲物を手に入れるのだと聞きました。そして巣を持って逃げ帰るのだと聞きました。どうかすると生き返った蜂に追われて刺されたという人の話も聞きました。』

そして藤村は、

『そうなると鉄砲をかついで獸を打ちに行くも同じようなものです。』

と、この項をまとめます。
つまり蜂の子を取りに行くのも命がけだと。

それにつけても近年この地蜂が少なくなってしまい、いまや蜂の子は超高級食材になってしまいました。
でも一度は食べてみたいと思いませんか?(笑)

はちみつ家メニュー

Copyright (C) 2011- Suzuki Bee Keeping All Rights Reserved.