ミツバチと共に90年――

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「老いたる素戔嗚尊(芥川龍之介)」に出てくる蜜蜂

筆者は芥川龍之介が大好きで、学生の頃はよく彼の小説を読んだものです。
今日はその作品の中のひとつ「老いたる素戔嗚尊(スサノオノミコト)」に出てくるミツバチを紹介します。

素戔嗚尊(スサノオノミコト)といえば、日本神話の立役者ですね。
高天原(たかあまはら)で大暴れして天岩戸(あまのいわと)事件を引き起こしたり、高天原を追われて地上に降りたてば八俣大蛇(やまたのおろち)を退治したりと、その荒くれ振りは頼もしくもあります。

龍之介はそんな素戔嗚の老いた姿を描きました。

『彼には須世理姫(スセリヒメ)という美しい娘がおりました。

ところがある日突然、須世理姫が見慣れない若者を連れて来たのです。
その男の名を葦原醜男(アシハラシコオ)と言いました。

素戔嗚は大事な娘を素性も知れない男にとられてしまうのが癪にさわって仕方ありません。表向きは平静を装いながらも、あの手この手で彼の殺害を試みます。

その最初の手段が、ハチミツを採取するために飼っていた蜂室に、彼を押し込めてしまうことでした。
ところが須世理姫は、肩にかけた領巾(ひれ)を3度振れば、蜂が刺さないことをそっと葦原醜男に教えます。
翌日、何事もなかったかのような顔をして生きている葦原醜男を、今度はヘビを飼っている室に閉じ込めますが、それもまた失敗に終わり、殺害の手段はどんどんエスカレートしていきます。ところが素戔嗚は、結局、葦原醜男を殺すことができませんでした。

ある日、素戔嗚は夢を見ます。己の過去を振り返るような罪悪に満ちた荒涼とした夢でした。
そして鏡に映った自分の顔を見て驚きます。それは葦原醜男の顔だったのです。
目を覚ました時、そこには須世理姫も葦原醜男もいませんでした。

二人は舟に乗り、素戔嗚のもとを去ったのでした。
激怒した素戔嗚は嵐のように岸に立ち、海の方を見ると、二人の乗った舟が沖へ行くのが見えました。
素戔嗚はすかさず天の弓に天の矢をつがへて二人を狙いましたが、じりじりと弓を絞り切った次の瞬間、何を思ったか弓矢を捨てて突然大声で笑い出したのです。
「俺はお前たちを寿(ことほ)ぐぞ!」
と。そして、
「俺よりももっと強くなれ!俺よりももっと知恵をみがけ!俺よりももっと仕合せになれ!」
と叫ぶのです。
そのとき彼は、過去のどんな自分の栄光よりも、ずっと天上の神々に近い、悠々とした威厳に充ち満ちていた―――。』

というお話です。

父と娘、そして老いるということ―――、いろいろ考えさせられる物語ですヨ。
それにしても、神世の昔からミツバチが飼われていたという設定は面白いですネ!(笑)

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