ミツバチと共に90年――

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ミルトンの『失楽園』に出て来るミツバチ

今日は久しぶりに「蜂が出て来る話」をご紹介します。

今回紹介するのは『失楽園』──。

『失楽園』といっても女優黒木瞳が出て来るあの映画ではありません(笑)──旧約聖書『創世記』をモチーフにしたJ・ミルトンの大叙事詩の方です。

第1巻~12巻からなるこの物語は、アダムとエバが神の禁を破って「善悪の知識の実」を食べ、エデンの園を追放される話として有名ですが、その物語の始まりは、神への反乱に失敗して地獄に堕ちたサタンのもとに、同じく地獄に堕とされた反乱天使たちが集まって来るシーンです。

地獄にサタンの神殿(万魔殿)が出来あがっていき、やがてそこに無数の堕天使たちが集まって来る様子を、ミルトンは次のように描写しました。

『太陽が金牛宮に入る陽春の頃ともなれば、蜜蜂は夥(おびただ)しい若蜂の群れをその巣から外へ追い出すが、それらの群れは、いくつかの塊りとなって爽(さわ)やかな朝露や花の間を右往左往して飛びかい、かと思うと、いわば藁(わら)の城砦(じょうさい)ともいえる巣箱の外郭、つまり馥郁(ふくいく)たる蜜液が附著したばかりの滑らかな板の上に降りたち、行きつ戻りつしながら国家の大事を協議することがある──まさにその光景を思わせるのが、飛翔する天使の群れが翕然(きゅうぜん)として集まり、犇(ひし)めき合っている姿であった。(平井正穂訳『失楽園』岩波文庫より)』

人の群衆をミツバチの群れに例える手法はよくあります。
「太陽が金牛宮に入る陽春の頃」というのは旧太陽暦の4月中旬にあたり、だいたい今頃の季節でしょう。当場のミツバチたちもそろそろ活発に動き出します。
「夥(おびただ)しい若蜂の群れ」というのは分蜂のことでしょうか?
「国家の大事を協議」というのは、きっと「これからどこに巣を作ろうか?」「女王を誰にしようか?」などと自分たちの国の創成を話し合っているミツバチたちの様子のことでしょうね。
こういう描写ができるということは、もしやミルトンも養蜂経験者なのでしょうか。

実際に巣箱や分蜂を見たことがある人は、彼が伝えたかった様子がひしひしと伝わってくるはずですが、それが全部サタンの仲間だというのですから恐ろしくなります。

まだ読み始めたばかりですが、冒頭の部分を読んだだけで、なんとも現代の若者たちが好みそうなパラレルワールドのようで、不可思議な世界に引き込まれているはちぶんです。

読み進めていく中で、また蜂が出てきたら紹介しますネ!

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