今回は久しぶりに「はちみつが出てくる話」で、仏教の『観無量寿経』という経典に出てくる物語をご紹介したいと思います。
タイトルは「王舎城の悲劇」。
王舎城とは昔インドにあったマガダ国という国の首都の名。
そしてこの物語は、お釈迦様がいた当時、王宮内で起こった親子の争いもとにした実話らしいです。
「王舎城に頻婆沙羅(ビンビサーラ)という王がおりました。
王とお釈迦様は親しく、王は釈尊に竹林精舎を寄進したほどでした。
その王子に阿闍世(あじゃせ)がいます。
彼は王妃の韋提希(いだいけ)夫人との間にできた子でした。
あるとき阿闍世は、あの悪名高き提婆達多(だいばだった)にそそのかされて、王位につこうと父を幽閉してしまいます。
王は水も食料も与えられず獄死しそうになりますが、そこに妻の韋提希が現れます。
蜂蜜が登場するのはこの場面―――
韋提希夫人は夫を助けるために体中に蜂蜜を塗り、衣服にブドウジュースを隠してひそかに王のところへ届けたのでした。
なんかちょっとエッチな感じもしますが(笑)、妻は夫を助けるために必死だったのでしょう。
しかし、ついに韋提希も見つかってしまい、王と同様に幽閉されてしまいます。
なすすべもなく、すっかり疲れ果てた韋提希は、近くの町に逗留していたお釈迦様を思って礼拝します。
すると、その心を察したお釈迦様は、神通力を使って弟子の目連と阿難を引き連れて彼女の前に現れたのでした。
韋提希夫人は、
「私は過去世にどのような罪があって、あのような親不孝な子供を産んだのでしょう?」
と問います。
すると、お釈迦様の眉間から光が放たれ、十方の仏国土を照らして彼女に見せたのでした。
「世尊よ、私もこんな国に生まれたい。どうかあそこへ行くための修行の方法をお説き下さい」
と韋提希は、牢獄の中にあって大きな安らぎを感じたのでした―――」
という物語です。
現実逃避の話であまり好きではありませんが(笑)、蜂蜜って西洋ばかりでなく、東洋にもずっと昔からあったのですネ!