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蜂蜜エッセイ応募作品

Yさんの友情

ボヘミアン

 

 Yさんと出会ってもうずいぶん月日がたつ。元元仕事がらみで紹介されたのが縁で、勤めていた会社のセミナーに招いたりして親交を深めていた。チェコ人のYさんは、愛想が良く、人の気をそらさない人で、時折放つ冗談も的を射ていた。意気投合していた私は、たまたまある年の年末に日本にいるというので、帰省するのでよかったら遊びに来ませんかと誘ってみた。Yさんは二つ返事で快諾し、実家で両親のもてなしを受け、一緒に温泉や史跡巡りなどを楽しんだ。その後、東京で再び会う機会があったとき、別れ際に液体の入った小瓶をくれた。何ですかとたずねると、プロポリスだという。なんでも風邪や喉の調子が悪い時に効くという。それを私の母にどうぞというのだ。よく見ると、茶褐色の液体である。蓋を開けるとアルコール臭が鼻をついた。聞けば、チェコにある市場から材料を仕入れて自分で作ったというではないか。海外を仕事で飛び回るYさんは、体調がすぐれないとき、お茶にプロポリスを数滴垂らして飲むとのことだった。私は、わざわざ手作りのプロポリスを持参してくれたことに感激し、何度もお礼を言い、後日母に手渡した。母は虫刺されや喉に効くとうれしそうだった。その後、仕事の都合でYさんとは疎遠になっていたが、メールのやりとりはしていた。ところが、2年ほど前から返事が来なくなった。心配して、Yさんの友達に様子をうかがったところ、どうも病気らしい。健康に気をつかってプロポリスを何本も自作していたYさんも寄る年波に勝てなかったのだろうか。実家には、以前Yさんから貰ったプロポリスがまだ数本残っている。母は受け取った日付をメモしたラベルをそれぞれの瓶に貼っていた。それらの月日を眺めながら、Yさんと話したあの頃、一緒に散策した場所、酒を酌み交わした居酒屋などが記憶に蘇ってきた。またいつか会いましょう、その時までこのプロポリスは大切にしておきます、私は心の中で呟いていた。

 

(完)

 

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