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蜂蜜エッセイ応募作品

蜂蜜がくれたもの

油谷麻衣

 

 約六年前、私は医学部の五年生だった。医学部では五年生はクリニカルクラークシップという病院実習があり、班ごとに一年かけて病院の各科をまわる。私はその班でいじめにあっていた。
 きっかけは私が実習をサボっていると他の班員に思われたことだった。当時、統合失調症の初期段階でまだ通院もしていなかった私は、原因不明の体調不良で実習を休むことが多かった。単位を取るには、週に一日ほど休んでも大丈夫だった。しかし、そのことを班員である佐藤さんに確認したところ、私がサボろうとしていると他の班員に告げ口され、いじめは始まった。私の主観なので、もしかしたら勘違いがあるかもしれない。けれど、私は病院実習が始まる前から、佐藤さんには、あなたは知的障害者みたいだと面と向かって言われていた。病院実習が始まる前、佐藤さんが同じ班だと発表されたときから、私は嫌な予感がしていた。母に先生に頼んで班を変えてもらおうかと相談したけれど、もう良い子に変わってるのじゃない?と言われそのままの班だった。
 病院実習が始まり二週間が経ったころから、私は特に悲しいことが起きたわけでもないのに涙を流す事が多くなった。特に、電車などにボーっと揺られていると必ずと言っていいほど泣くようになった。自分では何故なのか全く分からなかったけれど、精神的に限界が来ているというサインだったのかもしれない。
 そんな私の変化に母はいち早く気づいていた。学校でいじめられていたことも、私が持っていたメモからばれていた。母は学校に連絡するなどはしてくれなかった。けれど、日曜日の三時のおやつの時間に一杯の紅茶に一さじの蜂蜜を入れてくれた。
 あと○○週間で実習終わるからね、とひたすら何回も言われた。その○○週間が長いんだよなあ、と思ったけれど口には出さなかった。
 結局、最後には私がいじめっ子たちに対してへらへらと媚びへつらうのではなく冷たく接するようになりいじめは終わった。こんなことなら最初から冷たく接すれば良かったと後悔した。ただ、あの日曜日の蜂蜜は私に勇気をくれたことは間違いない。これから先、社会に出てもいじめはあるだろう。そんな時、今度は自分で蜂蜜入りの紅茶を美味しく作れるようになって、毎日疲れた自分を癒してあげたいと思う。

 

(完)

 

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